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エピソードと共に、その起源や、特徴を、ご紹介しています。意外な場所に、
意外な、お宝があるものです。画像と共に、うんちくも、お楽しみください。 

朝倉山椒壷の話 

古丹波焼(こたんばやき)に、朝倉山椒壷というものがあります。

朝倉山椒壷とは、丹波の名産であった朝倉山椒を、将軍家に献上するために入れたとされる壷で、江戸時代
初期
頃(慶長末年から寛永年間)の約30年に限り焼かれた、丹波焼です。

黒釉もしくは飴釉が掛かり、六角に成形されており、壷の裏には葉紋がおされてあるという特徴を、持ちます。

これが、城崎温泉・つたや旅館の所蔵の朝倉山椒壷で、江戸中期のものです。

  城崎温泉・つたや旅館所蔵品(本物

この、元はと言えば、山椒を運ぶ為の壷が、何故、有名なのかと言えば、この壷を、茶人が、水指として、
珍重した
からのようで、しかも、作られたのが、約30年間に限られたこともあって、高価で取引がされた
とのことです。

そのお陰で、明治に入ってから、贋作や、写し物が、かなり出てきたようで、「要注意物」のようです。

ただ、写し物の中には、力作もあり、それは、それとして、価値が見出せるようです。

こちらは、昭和初期の、信楽焼の写しで、丹波焼ではないので、明らかに、騙す意図のない作品です。



そこで、今回、下のようなものがオークションに出され、私も、欲しいなと思ってがんばったのですが、熱烈な
愛好家と思しき人がいらっしゃって、いくら値を上げても、追いつきませんでしたので、諦めましたが、色々と
研究をさせてもらいましたので、そのお話をしようと思い立ったわけです。



この作品を、見てみましょう。

まず、朝倉山椒壷の特徴を追っていきましょう。

@ 黒釉もしくは飴釉が掛かっている。

この壷には、丹波焼の十八番といえる灰ダラ釉が掛かっており、いかにも丹波焼という風情をしています。
しかし、城崎温泉・つたや旅館の壷は、飴釉が掛かっていますし、別の本物は、黒釉が掛かっており、
なんとなく、丹波焼を強調し過ぎている感じがします。

     本物の朝倉山椒壷(黒釉) 

A 六角に成形されている。

この壷は、六角形に成型されていますが、元々は、円形だったものを、六角形にした感じがして、丸みを
帯びています。

本物の2つは、きちんとした六角形をしており、作成方法が違うように見えます。

  写し物(昭和初期)は、形が丸みを帯びている。


B 壷の裏には葉紋がおされてある。

これは、本物の高台部分がわからないのではっきりとは言えないのですが、恐らく、この壷と同じように
葉紋が本物にもあるのでは?と思っています。



ちなみに、この壷を落札された方が、以前に買われている山椒壷には、下のような、葉紋があります。

 

さて、次に、「朝倉山椒」の印ですが、本物は、2つとも、

   

このような平べったい印になっています。

この壷のは、押印というよりは、書き込みっぽい感じがします。

 

また、「朝倉山椒」の印だけではなくて、横にも、書き込みが見られます。





これは、もしかすると、写した人の銘、又は、元号の書き込みなのか?とも、思えます。

次に、大きさですが、この朝倉山椒壷は、高:約17・5cm。口径:約12・8cmの大きさで、口も大きく開けて
あり、水指として丁度良い大きさになっています。

しかし、本物は、高さが、20cm〜30cmあったということですから、この壷は、水指用に写したのでは?と
思えます。

 

こういった点を総合的に勘案すると、この壷は、本物の「朝倉山椒壷」ではなくて、昭和初期の写し物では
ないか?というのが、私の推測でした。ここまで、推測が来た時点で、オークションでの深追いは、止めることに
したわけですが、3人で競った結果は、14600円での落札 になりました。

いずれにしても、この朝倉山椒壷は、写しであっても、中々の良品だと思いますし、数少ない古丹波のヒット
商品
ですので、ゲットされた方は、水指として、大切に使ってもらえれば・・・・・と考えています。(悔しさ、
ありあり!(笑))
                                               (記 : 2009年12月1日)

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