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これは、お花見等の屋外での行楽用に用いられた燗銅壺(かんどうこ)という道具です。炭火を入れて湯を温め、ちろり(手つきの容器)に酒を入れて燗付けします。 大きさは、本体が、約横23.5p、巾13p、高さ13p位です。持ち手の竹編みが繊細な造りです。恐らく、昭和初期のものだと思います。 大きさも、手頃ですし、インテリアとしてもいいし、何と言っても、呑んべいにとっては、ロマンの塊ですので、入手できて、喜んでいます。 ★ 日本酒の燗付けの風習はいつから? ★ 日本酒の燗を付ける風習は、平安時代から始まったと言われ、右の写真のような金属製の銚子(ちょうし)、又は、鉄製の燗鍋(かんなべ)(後に、銅製も登場)という道具で、直火で暖めていました。 江戸時代の後期の天保年間辺りからは、陶器製の一合〜二合入りのいわゆる燗徳利が登場し、酒席で、燗徳利から盃に注いで飲むようになりました。(1升入る通徳利は、「徳利と盃の話」参照) 本来、銚子は、金属製ですが、明治時代に入って、陶器製の燗徳利と混同され、燗徳利をお銚子ともいうようになっています。 燗鍋の方は、茶道の発展と共に、懐石に用いる酒注ぎとなり、この燗鍋を「銚子」ということもあります。現在では、別の容器で燗をした酒を、燗鍋に移して使用します。(Wikipediaでは、燗鍋を、本来の「銚子」としています。) こちらは、鉄製の漆塗り梅花図蒔絵入銚子です。 銚子(燗鍋) 大きさは、高さ:20cm、径:16.5cm、長さ:22cmほどで、鉄地に漆塗りが施されています。蓋は、木製に漆塗りで、全体に、梅花紋の蒔絵が描かれています。 全体が、漆塗りですので、直火で燗をつける燗鍋ではなく、別の容器で燗をしたお酒を、この銚子に入れて、客に出したものと思われます。 鉄製で、蓋が陶器のものと入れ替えが出来る銚子は、よく見かけますが、鉄地に漆を塗ったものは珍しく、珍品が手に入ったと喜んでいます。 ただ、この銚子、恐らく、懐石の汁器として使われていたようで、内部に漆の剥げがあります。漆の初心者キットを買っていますので、少し、腕を上げたら、補修をしてみようか?と思っています。 江戸時代の後期より、「ちろり」という把手の付いた筒形銅製(約一〜二合入)の器を、薬罐、または、銅壺に入れて湯煎して燗をし、燗徳利に移すようになりました。居酒屋では、燗酒をちろりから直接茶碗に注いで飲みましたが、下賤とされました。 ちろりは、銅製のものや、錫製のものが多くつかわれました。右側の本錫製のちろりは、この燗銅壺用に買ったもので、高さが、11cmほどで、燗銅壺で燗をするのに、丁度良い大きさです。 こうして、お酒を燗徳利、又は、ちろりで燗をするようになると、燗付け器が必要になってきます。そこで、登場したのが、銅壷(どうこ)といわれる道具で、火鉢の中に置き、湯を沸かし燗酒をつくる民具です。 銅壺 炭から熱を受ける部分と、湯を貯め徳利を浸ける部分に分かれ、2本のパイプで繋がれており、その構造はバランス釜と浴槽に似ています。素材は、熱伝導性が高い純銅が多く使用されています。 2本銚子用銅壺 上の写真のように、長火鉢に埋めて使います。銅壺全体に水が入っていて、お湯が沸いている状態になり、蓋を開けて、その中に、燗徳利や、ちろりを浸けて燗をします。江戸後期、明治〜昭和初期頃まで、使用されました。 私の銅壺は、燗銅壺(かんどうこ)といわれる、熱源の炭火を内蔵する、銅製の徳利湯煎器で、火鉢に据える銅壺とは、区別されています。手提げ式になっており、携帯可能で、お花見や、行楽用に工夫して作られたものです。こちらも、江戸後期から、昭和初期に掛けて使われたということです。 下の写真の左側の部分で炭火を起こし、右側の蓋を取って注がれた水を温めて、燗付け器になります。写真にある「ちろり(銚釐)」と呼ばれる手付きの燗付け容器、又は、燗徳利をその中に入れて燗をします。 炭火の方では、金網を付ければ、するめや、ししゃも、生しいたけ、焼き鳥等を焼いて食べることも出来ますよ。益々、趣向が出ますね。堪りませんなぁ〜〜〜!(笑) 燗銅壺で燗酒 尚、「たんぽ」という「ちろり」に似た酒器がありますが、現代では、「ちろり」と「たんぽ(酒たんぽ)」は、混同され、同様の扱いになっているようです。(たんぽは、「京都・大阪で称された、主に錫製の燗器」という 説があります。) おでん屋さんでよく見る燗付け器ですよね。何故か、お酒がおいしく燗が付くような気がするのは、不思議です。(笑) 小料理屋さんの中には、お客にちろりで自由に、好みの熱さに燗を付けてもらうようにしているところもあるそうです。これも、また粋ですね。 ★ 燗酒の種類 ★ 近年、吟醸酒の出現で、冷で飲むことが多くなってきている日本酒ですが、燗を付けて飲むのも、また、乙なものです。 燗の温度は、6段階に分類されるそうで、温度の低い方から、「日向燗」、「人肌燗」、「ぬる燗」、「上燗」、「熱燗」、「飛切燗」に分類され、ほぼ5度の温度差で、熱くなっていきます。 私も、よく、「熱燗でお願いします!」と、注文していましたが、「暖めてください」程度にしか、考えていませんでしたが、実は、「50度くらいの温度のお酒をください」と言っていたんですね。(笑) それにしては、口が付けられないような、熱いお酒が出てくることが多いような気がしますが、これは、恐らく、「チン!」のせいでしょうね。(笑) 燗酒の歴史や、道具を追ってきましたが、日本酒を飲む文化も、最近の若者の日本酒離れや、酒飲みを嫌う風潮が出てきて、独特の文化が消え去ろうとしています。 なんと、日本人というのは、忘れることが早い人種なんだろうと感じることが多い昨今ですが、呑んべいの意地で、こんな文化があったんだということだけは、残しておきたいと思っています。 (記 : 2012年10月7日) 追記 : 燗銅壺2号をゲットしました。ほぼ同じ大きさですが、こちらは、角型です。「燗銅壺2号と3号をゲット!」をご参照ください。 奥が、燗銅壺1号、手前が、燗銅壺2号です。 (追記 : 2012年10月31日)
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