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エピソードと共に、その起源や、特徴を、ご紹介しています。意外な場所に、
意外な、お宝があるものです。画像と共に、うんちくも、お楽しみください。 

マイセンと柿右衛門

ドイツ国、ドレスデン市近郊の町、マイセン窯で焼かれたコーヒーカップとソーサーのセットです。

















大きさは、コーヒーカップが、径:6.5cm、高さ:5.3cmで、ソーサーが、径:11.0cm、高さ:2.5cmです。

マイセンの中で、最も古いデザインの一つ「ドラゴン」シリーズのブラック(320010/00570)です。まるで入れ墨のようなマイセンの有名なドラゴンが、リアルに堂々と描かれており、特に、鱗部分の金彩が素晴らしく、コーヒータイムの静かな時間を、祝祭の時へと変化させます。

マイセン双剣マークの他に、コバルトブルーでのマークがありませんので、1985年以降の作品のようです。(下記、マイセンの双剣マークをご参照ください。)

マイセンという陶磁器の名前は、TV番組「お宝鑑定団」でもお馴染みのブランド名ですよね。特に、日本では人気のブランドで、コレクターも多い磁器です。

その本物のマイセンを、何故、私が持っているの?と疑われる方も多いでしょう。(笑)

何せ、マイセンの本物は、高価で、我々のような庶民が持てるものではありません。ふふふ・・・・・やっぱり、これは、私が買ったものではなく、焼きもの仲間のお友達にいただいたものです。

以前に、源右衛門の作品を持っていないと話していたら、す〜〜〜と、源右衛門の小鉢を、「差し上げます。」と気前良く差し出していただいたお方です。(「有田焼・源右衛門の小鉢」参照)

その方のお宅を訪れると、マイセンと人形がたくさん飾ってあります。おお〜〜〜〜!というわけで、私が、ルーペで、「これは、本物のマイセン、これは、怪しい〜〜〜〜」とか、茶化していたのですが、転勤になるので、お別れに「本物を差し上げます。」と、今度も、気前良く、差し出していただきました。

うんんん・・・・・さすがに、貰いっぱなしでは、拙いなと思ったのですが、変なものでは、差し上げるのに、不似合いですので、困っていたのですが、これ以上変なものはないと思えるような、私が、七輪陶芸で焼いた、備前焼風のぐい呑みを差し上げることにしました。

「今は、無価値ですが、将来は、価値のあるものになるかもしれません。」と、大見得を切って、お渡ししました。(笑)

このマイセンは、オーストリアのウィーンで手に入れたものだそうで、その頃、マイセンをはじめとする、西洋陶磁器に嵌っていて、買い漁ったものの1つだそうです。バブル時代かな?

作品への手の入れよう、金彩の細やかさ、色使い、どれを取っても、上級品です。西洋陶磁器には、あまり関心がなかった私ですが、マイセンは、柿右衛門との繋がりがあることを知っていましたし、「なんでも鑑定団」にもよく出てくるお品ですので、興味がありましたが、コレクションに加えることが出来るとは・・・・・

今回、いただいたマイセンのお陰で、日本の焼きものと、西洋の焼きものとの接点を探ることの出来る、このようなレポートを作成することが出来ました。感謝、感謝!!



柿右衛門のぐい呑みと、マイセンのコーヒーカップを並べてみました。同じ白磁ですが、微妙に「白」が違うのがわかると思います。柿右衛門の方は、やや濁った感じで、温かみを感じ、マイセンの方は、純白の「白」といった感じです。

★ マイセン窯とは ★

17世紀初頭に、オランダの東インド会社等を通じて、中国や日本の硬質磁器がヨーロッパに運ばれ、宮廷、支配者階級の間で、熱狂的に受け入れられていました。中でも、明の色絵や、1647年に赤絵に成功した柿右衛門は、金にも勝る価値があり、錬金術師にとって、磁器の生産が悲願でした。

そういった背景の中、ドイツの錬金術師 ベトガーが、1709年、ザクセン、フォークランド地方で、カオリンを含む磁土を発見し、ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世の庇護のもとに、白磁の製作に成功しました。(日本の有田焼は、この約100年前の1616年頃に、白磁の焼成に成功しています。(「古伊万里の里を訪ねて」参照))

翌1710年、ドレスデンに、「王立ザクセン磁器工場」が設立され、硬質磁器製造の独占権が与えられ、その数ヵ月後に、磁器工場は、25km離れたエルベ川沿いのマイセン地方・アルブレヒト城の内部に移され、厳重に機密が保持されました。これが、硬質磁器としては、ヨーロッパ最古の、300年の伝統をもつ古窯である、マイセン窯であり、現在の「国立マイセン磁器製作所」の始まりとなっています。

その後、1717年には、染付け磁器の焼成に成功し、1722年頃からは、コバルトブルーのマイセン窯印の双剣を使うようになっています。窯印は、時代によって、変遷していますが、1820年以降は、現在のものに近いもので、定着してます。

マイセン窯では、1725年頃から、当時、人気絶頂だった柿右衛門の写しも作られ、その数は、本場の柿右衛門の数量を上回るといわれています。

 左がマイセンの写しで、右が柿右衛門

これは、ヨーロッパが、後期バロックから、ロココ様式へ移行していた時期で、柿右衛門が、良く調和したためと考えられています。マイセンの初期のものには、柿右衛門様式だけでなく、中国の五彩磁器や染付けのデザインを模したものも多く、シノワズリ(中国趣味)といわれています。

製作方法の機密を管理していたマイセン窯ですが、その技術は、1718年以降、ヨーロッパ各地に漏れてしまい、各地で磁器窯ができるようになりました。

★ マイセンの双剣マーク ★

マイセンのトレードマークは、「双剣」で、(つるぎ)と、(つば)を表しています。当初は、柄頭(つかがしら)が付いていましたが、しだいに示されなくなりました。


 1850〜1924年頃の柄頭付双剣

わずかに緩やかな弧を描いた刃は、比較的高い位置で交差し、それが下方の柄頭を引き立たせています。

  1934年〜の双剣
 
刃の交差する位置は、比較的中央で、鍔は刃と反対方向にほぼ同様の弧を描いています。

また、この双剣マークは、マイセン磁器製作所の商標として、1875年以後、国内外に登録され、かつ法的に保護されています。

尚、マイセンは、1948年から、双剣マークの他に、ようやく製作年代を示すマークが入るようになり、旧東ドイツ時代の1957〜1985年のものには、裏のマイセンマークの横に、ブルーの小さな線(または点)が入ってます。1957〜1972年に製作されたものには、マイセンマークのに印があり、1972〜1980年に製作されたものには、マイセンマークのに印、1980〜1985年に製作されたものには、マイセンマークのに印があります。1985年以降のものには、印がありません。

1980年から、2級品以下には、キャンセルマークの「スクラッチ」(ひっかき傷)が入っています。

★ マイセンの代表作 ★

 ブルーオニオン

マイセン窯草創期、日本や中国の東洋の東洋磁器に描かれたコバルトブルーのザクロが西洋に伝わったさい、西洋ではザクロが一般的では無かったためタマネギと誤認されたことから作られた図案。

上絵付釉の調合技法を開発したヨハン・ヘロルトが絵付け部門の指揮者を務めていた、1739年に完成した。

 ドラゴン

マイセン窯の絵付けとしては初期に確立された、シノワズリ(東洋趣味)の図案による染付食器シリーズ。

「ドラゴン」は景徳鎮窯などから輸出された食器などに使用されていた龍の図案の写しである。



 柿右衛門写し

その名の通り、柿右衛門窯の作品の写しである。





 その他のシリーズ

   
      アラビアンナイトシリーズ               ピンクのバラシリーズ

 ドラゴンシリーズのカラーいろいろ

私のドラゴンの「ブラック」の他に「ピンク」、「青」、「緑」、「紫」、「オレンジ」、「黄」などがあります。

  

  

★ 西洋の磁器窯 ★

ヨーロッパ最初の硬質磁器窯は、ドイツマイセン窯でしたが、ヨーロッパ各国でも、磁器生産に力を入れていました。

フランスでは、17世紀後半より、磁器焼成の努力をしていました。シャンティー窯や、セーブル窯の前身のヴァンサンヌ窯で磁器が焼成されていましたが、いわゆる軟質磁器で、1740年、セーブル磁器製作所が、ヴァンサンヌ窯を受け継ぎ、フランス大革命までは、王立磁器製作所として、高級食器を製作し、現在に至っています。

尚、フランスでも、1760年代に、リモージュでカオリンを含む磁土が発見されて、硬質磁器の生産を開始し、現在、ブランス最大の窯場となっています。

ウェッジウッドのジャスパー・ウエア ヨーロッパでも独自の陶芸文化を築き上げてきたイギリスでは、イギリス近代陶芸の父とされるジョサイヤ・ウェッジウッドが、近代化を推し進め、クイーンズ・ウエア(クリーム色陶器)、ボーン・チャイナ(骨灰磁器)の焼成の他、ブラック・バザルトや、ジャスパー・ウェアなどを製作しました。

リバプールに近い、ストーク・オン・トレントは、ウェッジウッド社をはじめ、ロイヤル・クラウンダービー社、スポウド社など、多くの工場のあるイギリス最大の窯場となっています。

その他、デンマークロイヤル・コペンハーゲン社や、フィンランドアラビア社などが、重要な窯となっています。
                                                (記 : 2012年12月25日)

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