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2013年12月14日、ミャンマーのバガンを訪れ、「MYA THIT SAR」という漆器工房を見学してきました。 バガンは、9〜13世紀に栄えたミャンマーの古都 ですが、その時期から伝わる漆器の技術と焼き物があります。バガンにある3000とも5000ともいわれるパゴダの景観も圧巻で、カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥールと共に、世界3大仏教遺跡の1つとされています。 この地が、ミャンマー漆器の起源であり、今でも、伝統は延々と引き継がれており、ミャンマーの重要な産業となっています。 これは、その際に買った蒟醤(キンマ)の汁椀です。 大きさは、径:12.8cm、高さ:7cmほどで、器体も厚く、しっかりしているので、木材かなと思って聞いたのですが、これも器体は、竹だそうです。この汁椀は、珍しく、内側が朱漆塗になっています。黒漆の地に、朱漆の仕上げ塗をしているものと思います。USドルで28ドルでしたが、決してお土産品ではなく、漆器の作品とみて購入しました。 抹茶椀にしても、充分耐えられるしっかりとしたお椀だと思います。 こちらは、蒟醤(キンマ)の棗です。 大きさは、径:7.5cm、高さ:7.5cmの棗です。器体は、竹ということですが、しっかりしています。漆の塗り重ねがしっかりしているということだと思います。 こちらは、馬の毛が器体となっているぐい呑みです。 大きさは、径:6.5cm、高さ:6cmほどです。写真のように、少々摘まんでも形状記憶合金のように形状を記憶しています。 工房を見学したいと申し出ると、下のおばさんが、丁寧に英語で説明をしてくれました。 手に持っているのが、竹を器体にした焼酎?カップです。右の棚にあるものが、その変遷を示していて、竹の器体に、漆を塗り重ねると、上段の右端の黒塗りの器体が出来上がります。その間、5ヶ月掛かるそうで、塗っては乾かし、塗っては乾かし、15〜16回を塗り重ねるということです。 使っている漆を見せていただきましたが、自然のもので、取ってからしばらくすると、真っ黒になると言っていたと思います。湿気でのみ固まるので、空気に触れている表面は、固まるが、中身は、固まらないと話していました。掻き取りの方法も日本と同じで、写真で説明してくれました。 次に、蒟醤(キンマ)の彫り込み作業に入ります。 左端のように、黒漆の器体に、手作業で、彫り込みを入れていきます。職人が、熟練しているので、下絵などはないそうです。彫った後は、まず、朱色の色漆を入れていきます。ここまでで、完成のものもあります。 次に、緑漆を入れていきます。そして、最後が、黄漆で、伝統的な色漆の色は、この3色だけだそうです。 よく、青色や、ピンクのようなものもありますが、これらは、人工顔料ですので、お土産用だと話されていました。また、これら以外の色のものは、キンマではなく、上絵のものも多いと話されていました。 一通りのミャンマー漆器が出来るまでの、過程の説明を受けた後、作業場へ案内していただきました。 まず、地下にある、乾燥室(日本では、室(むろ)といっています。)を見せていただきました。 各工程の漆器は、乾くまで、約1週間掛かるそうで、この地下室で、湿度を一定にして、乾燥させるそうです。 次に、職人の作業場を見せていただきました。 ミャンマー漆器の器体は、チーク(木材)、竹材、馬の毛が使われています。 大物の家具類は、チーク材が使われていて、完成までには、1年以上掛かるそうです。 こちらのお嬢さんは、茶筒でしょうか?下絵もなく、手彫りで、模様を彫っています。 こちらのおにいさんは、竹材で、器体を作る作業をしています。 大物の家具は、2人掛かりで、彫り込みをしています。 こちらは、竹のみの器体と、馬の毛を使った器体です。馬の毛を使ったものは、軽いのと、柔らかいのが特徴で、漆自体が、固く固まったものではなく、器体に合わせて伸縮することがわかります。 このような説明を受けた後で、購入したのが、上記の漆器3点です。 店内には、大物から、お土産用まで、色々と置いてありましたが、漆器の説明をしてくれた際に、「これは、伝統のミャンマー漆器ではない」と、おっしゃっていたものも置いてあるのが、面白かったですね。きっと、伝統的な漆器よりも、人気がある売れ筋なんでしょうね。(笑) 店内にて 忙しい仕事のスケジュールの合間を縫っての訪問でしたので、バガンには、3時間ほどしか滞在することができませんでしたが、多くの観光客は、自転車や、電動自転車を借りて、バガンの遺跡巡りをしていました。 この時期は、暑さもそれほどでもありませんし、豊かな自然の中で、自転車を漕ぎながらのパゴダ回りは、オススメですね。 パゴダ群 このバガンのパゴダ群ですが、9世紀〜13世紀(大半は、11〜13世紀)に渡って作られたものです。日本では、平安時代〜鎌倉時代に当たります。何故、こんなに多くのパゴダが、この時期に出来たのか?不思議ですよね。構造的には、すべてが、レンガ造ですので、近辺に焼き物を焼く、地域があったことが伺えると思います。 そして、バガンを流れる広大なイラワジ川を利用して、その建設資材を運んだものと思います。 イラワジ川 13世紀に、モンゴル(元)の来襲よって、バガン王朝が滅ぼされた後、パゴダの数は減ったそうですが、それでも、街の中は、至るところにパゴダだらけですから、その繁栄ぶりがわかります。 残念なのは、その後、ミャンマーには、強大な政権が出来なかったことから、保存状態があまりよくありません。下の写真は、ゴドーパリィン寺院の内部ですが、天井から、剥げ落ちた部分の補修は、稚拙な感じがしますし、あちこちに、補修の必要な個所がありました。 また、補修も素人の補修で、逆に文化財の価値を下げています。これが、これだけの文化遺産でありながら、世界遺産に登録されていない理由ですが、日本やヨーロッパからの技術的な支援を受けて、その修復を始めているパゴダもあります。 ただ、その数が膨大ですから、すべての修復は無理でしょうね。 また、私が訪れたパゴダすべてが、入場無料でした。要するに、ミャンマーの方々が、いつでも、お参りが出来るようになっていて、今でも、信仰の場としての、重要なものであることがわかります。 せめて、外国人観光客くらいからは、入場料を払ってもらって、遺産の維持管理に使っていただきたいと思った次第ですが、どうでしょうね? アーナンダ ゴドーパリィン タマヤンジー これらは、私が訪れた観光客の多くが訪れるパゴダです。上から、アーナンダ寺院、ゴドーパリィン寺院、タマヤンジー寺院です。どちらにも、4面に仏像があって、回廊式の廊下を歩いて、4面の仏様にお祈りが出来るようになっています。 我々を案内してくれている運転手もお参りします。(ゴドーパリィン寺院内部) バガンは、歴史を感じる地域でしたし、その時代からのキンマの漆器が延々と作り続けられているということで、感慨深い旅でした。時間の関係で、短い時間しか滞在できませんでしたが、オススメの観光地ですので、ミャンマーへ行く機会があったら、バガンまで足を延ばすのをお勧めします。 (記 : 2013年12月21日)
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