佐藤幸雄作・紫雲石硯(しうんせきすずり)です。
大きさは、幅:102mm、長さ:197mm、高さ:19mmほどで、紙共箱、栞付きで、「岩手東山紫雲名石硯」、「幸雄作」と刻印があります。彫刻はありませんが、自然の形をうまく使った硯です。
現在、紫雲石硯を作硯をされている硯匠は、一関市東山町田河津字夏山の、佐藤
鐡治さんと、大船渡市赤崎町大立で作硯をされている 熊谷利夫さんと清さんのみとなっていますが、この硯は、佐藤
鐡治さんの先代の佐藤幸雄さんの作品で、佐藤家は、雄勝の硯工・山本幸次郎(初代)から、二代鉄三郎、三代幸雄、四代鉄治と続いている家系です。
この紫雲石硯は、栞や、共紙箱から、昭和の時代のものではないか?と思っています。
東山町で作硯されている佐藤鐡治さん
硯と言えば、黒色のものが多い中、紫雲石硯
は、主に赤紫色というか小豆色の硯です。紫雲石には、特徴のある斑紋が出ているものがありますが、この硯には見られません。日本の硯の中には、山口県の赤間硯、宮崎県の紅渓石硯
も、このような小豆色の硯として、有名です。
★ 紫雲石硯とは ★
紫雲石硯(しうんせきすずり)は、岩手県一関市東山町で採石された美しい赤紫色の原石を使って、東山町と大船渡市の工房で作られている硯です。
鎌倉時代に旅の僧侶が、大船渡長安寺に立ち寄り、石を硯として使用したのが始まりとされ、その後、鎌倉へ持ち帰り、時の将軍に献上し、その美しさから紫雲石硯と命名されました。
藤原三代のころから生産されていた歴史があり、「安永風土記」によれば、享保8年(1723年)、ときの仙台藩主がこの石に目を留め、他藩に誇れる石として、勝手に採掘することを禁じられた「お留め山」になりました。
原石は、輝緑凝灰石
で、北上山系大船渡から南西の方に存在し、東山町周辺まであります。しかし、石の脈中が狭く、南から北に走っている黒色粘板岩と石灰岩の間にあり、掘ることが困難です。石質は古生代デボン紀、およそ4億万年以前のもので、普通小豆色で、石目は薄板が重なっており、紫雲状の斑紋や、緑色の円形斑紋が入っています。また、緑一色のものもあり、剥離しにくいのが特徴です。
摩墨も早く、細やかで暖かく気品のある墨頃から水墨画など幅広い適合性があります。
緑の円形班紋の入った紫雲石硯
緑一色のものは、希少になっています。
紫雲石の原石
紫雲石硯もまた、後継者不足で、存亡の危機に瀕しています。瑞泉工房では、息子さんが継いでおられますので、少し猶予はありますが、評価の高い硯ですので、継承していただきたいですね。
(記 : 2013年12月2日)
追記 :
佐藤幸雄作、紫雲石硯の2枚目を手に入れました。
大きさは、縦:14cm、横:9cm、厚さ:3cmほどで、紙共箱付きです。
少し、使用の後の墨が残っていましたので、ぬるま湯にしばらく入れて、メラミンスポンジを使って、残っている墨を落として、きれいにしました。このやり方ですが、結構、有効でオススメです。
また、墨堂の部分は、泥砥石を使って、研いでみました。
いい硯ですので、大切にしてあげたいですね。
最終更新日 : 2015年11月17日
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