旅するところ、焼き物・骨董あり! <<<焼き物・骨董情報サイト>>>
やきものに絵をつける場合、釉薬の下に付ける、「下絵」と、釉薬の上に付ける、「上絵」があります。 ★ 下絵付けの技術 ★ 下絵は、素焼きしたものに、直接絵を付け、透明釉を掛けて焼くもので、釉薬の下に絵がありますので、絵が痛みにくいという特徴があります。 1. 染付け (そめつけ) 染付けは、白地に、藍一色の絵模様が映える、飽きのこないやきものです。酸化コバルトを主成分とする呉須という顔料で絵付けをし、透明釉を掛けて焼き上げるものです。中国では、「青花」と呼んでいます。 磁器に使われることが多いのですが、陶器であっても、同様の発色をします。 初期伊万里風の有田焼 日本での染付けは、17世紀のはじめに、有田で焼成された、初期伊万里が最初で、主な産地は、有田焼、瀬戸焼、三川内焼、砥部焼等々です。この作品は、有田焼祭りで有田を訪れた際に買った、初期伊万里風の有田焼で、吹き墨手法が取られています。(「古伊万里の里を訪ねて」参照) こちらは、砥部焼のぐい呑みです。砥部の磁土は、有田や天草のものに比べると純度が低いので、白地が少し乳白色になっていますが、砥部唐草模様をはじめ、染付けの作品の多い産地です。(「砥部焼祭りと平山郁夫美術館の旅」参照) こちらは、高知県の尾戸焼ですが、陶器にも、染付けはできますが、地肌の色が出てきますので、全くの白地にはなりません。(「尾戸焼の舟徳利と茶碗」参照) 2. 鉄絵 (てつえ) 鉄絵は、酸化鉄を成分とする鉄砂(ベンガラ)を使って、絵付けをし、長石釉や、藁灰釉などを掛けて焼くものです。 絵付けをした部分が、茶褐色になって現れます。 これは、益子焼で、糠釉鉄絵花生です。籾殻を使った灰釉を掛けていますので、乳白色になっています。(「益子焼の花生」参照) 島根県の温泉津焼の鉄絵ぐい呑みです。単純な文様の鉄絵ですが、アクセントとしてよい景色になっています。(「温泉津焼のぐい呑み2点」参照) ★ 上絵付けの技術 ★ 上絵付けとは、一旦、透明釉を掛けて焼いたものに、絵付けするものです。尚、染錦手といって、染付けされたものに、上絵を付けるものもあります。 1. 色絵 (いろえ) 色絵は、赤、青、緑、黄色、茶色の5色を使うのが基本で、中国では、「五彩」と呼ばれています。 その中で、赤が主体のものを、「赤絵」といいます。 柿右衛門ぐい呑み 赤絵の典型的なものが、柿右衛門様式です。大きく余白を残しているのが特徴です。(「柿右衛門のぐい呑み」参照) 「萬暦赤絵」 「呉須赤絵」 上の作品は、いずれも、中国の明時代の赤絵で、全体が赤っぽく見えるのがわかると思います。 2. 古九谷様式 (こくたにようしき) 古九谷様式は、緑、青、黄色を主体に、器いっぱいに使うのが特徴で、赤を使わないものは、「青九谷」と呼ばれています。 これは、加登明雄さんの作品で、吉田屋風の写しを得意としており、この酒盃も、これぞ「青九谷」と言えるような作品です。(「九谷焼・朴葉二鳥文盃」参照) 3. 染錦手 (そめにしきで) 染付錦手とも呼ばれ、下絵の染付けと、上絵の色絵を組み合わせたものです。 これは、嬉野焼の宮崎祐輔さんの作品で、右の山水画が染付けで、左側の模様が、色絵になっています。(「宮崎祐輔作・嬉野焼のぐい呑み」参照) 4. 金襴手 (きんらんで) 金襴手は、色絵や、染錦に、さらに、金泥や、金箔を施して、豪華絢爛に仕上げたものです。金の融点は、250〜300度と低いので、上絵を焼いた後に、再度、金だけを焼き直します。電子レンジで、金の付いたものを入れると、パチパチと焼けてしまうのは、そのためです。 これは、美濃焼の、虎渓山 水月窯、紅白梅徳利ですが、金の焼付けが、花の部分に、少しだけされています。絢爛豪華とはいえませんが、金襴手の作品には違いありません。(「虎渓山 水月窯作・紅白梅徳利」参照) 私は、あまり豪華絢爛な作品は、好きではありませんので、この作品しか、金襴手の例が見つかりませんでした。(笑) 5. 雲錦手 (うんきんで) 雲錦手は、一つの器に桜と紅葉の文様を、一緒にあしらった絵付けのものをいいます。乾山や道八の雲錦文鉢が有名で、京焼の陶工、仁阿弥道八が考案したといわれています。 犬山焼(いぬやまやき)の、5代尾関作十郎作、雲錦手 四方飾り皿ですが、雲錦手の作品は、犬山焼や、京焼に多くみられます。(「犬山焼の雲錦手・四方飾り皿」参照) (記 : 2012年9月3日)
Copyright (C) ともさんの焼き物・骨董紀行 All Rights Reserved