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エピソードと共に、その起源や、特徴を、ご紹介しています。意外な場所に、
意外な、お宝があるものです。画像と共に、うんちくも、お楽しみください。 

やきものの基礎知識(焼締・窯変編)

釉薬の知識と技術は、焼き物を焼いている時に、自然にできた「自然釉」に注目することから始まっています。

釉薬を掛けずに焼くやきものを、無釉陶と呼びますが、多くは、「焼き締め」という、高温で堅く焼き締めただけの技法で作られています。

しかし、高温で長時間、焼かれることから、炎の洗礼を受けて、様々な窯変を起こし、それが、味わいとなっています。

1. 自然釉 (しぜんゆう)

焼成中に灰が降りかかって付着すると、灰の成分のアルカリが素地の中の珪酸と化合して、ガラス質になり、意図的に釉薬を掛けたわけではないのに、自然に釉が掛かることがあり、「自然釉 」と呼んでいます。

 

信楽焼の水指ですが、炎が、正面から当たって、釉垂れを起こしており、自然が作った素晴らしい景色です。(「信楽焼の水指」参照)



こちらは、伊賀焼・普門窯、峰興徳作の平茶碗です。炎が当たる正面からは、自然釉が掛かっていますが、背面になると灰が当たらず、ビードロ釉が掛かっていません。(「峰興徳作、伊賀焼の平茶碗」参照)

中世古窯の信楽(伊賀)、常滑、越前、丹波などの壺には、ビードロ色の自然釉が掛かり、美しい景色になっています。

2. 牡丹餅 (ぼたもち)

窯入れをする際に、なるべく多く積み重ねようとして、皿の上に、徳利のようなものを乗せて焼いたら、その部分が、焼けむらとなってしまったが、それが、逆に、景色を出しているというものです。

焼けむらの部分が、あたかも牡丹餅のような形になったことから、「牡丹餅」、又は、「抜け」、「抜け肌」といわれ、備前焼の特徴となっています。



最近では、意図的に模様を作っているところもあるようですが、窯入れでの、偶然の産物ということになりますね。これは、備前焼・備州窯の8寸皿で、3つの牡丹餅がいい景色を出している作品です。(「備前焼の大皿」参照)



こうして、安物の刺身を盛ってみると、高級な刺身に見えるのが不思議です。(笑)

3. 火襷 (ひだすき)

これも、備前焼にみられる窯変で、藁で縛って、窯入れをしていたら、藁のアルカリ分と土に含まれる鉄分が化合して、火色になったものです。



これも、備前焼の片口鉢とぐい呑みですが、藁があった部分が、赤く緋色になっているのがわかると思います。(「備前焼の片口鉢とぐい呑み」参照)

4. 桟切り (さんぎり)

これも、備前焼にみられる窯変で、窯の隅や、器物の陰など、直接に炎や灰の当たらない、煙に包み込まれるような場所でとれる模様で、灰に埋もれている状態にあるものにも見られる模様です。窯の各部屋を仕切る桟の近くでよく取れたので、この名称となっています。

備前焼は、酸化焼成ですが、桟切りは、部分的に還元焼成になって燻されて、灰青色や暗灰色になったものです。



備前焼・明治窯の徳利ですが、半分くらい灰に埋もれていたのでしょうか?灰青色になっています。(「備前焼の徳利と片口鉢」参照)

5. 燻べ焼き (くすべやき)、 灰被 (はいかつぎ)

基本的に、焼き締めは、酸化焼成ですが、焼成の最終段階で、空気の送り口を締めて、強還元焔焼成で焼くと、少し鼠色っぽい感じの黒灰色になります。

この焼き方を、燻べ焼きといい、珠洲焼で行われています。強還元焼成ですから、備前焼の桟切りと同じような状態になり、灰青色、黒灰色になるというわけです。



これは、珠洲焼(すずやき)・冶遊庵窯能村 耕作、自然釉焼き締めの徳利です。灰被(はいかつぎ)が、きれいな景色を出しています。(「能村耕作、珠洲焼の酒器セット」参照)

6. 施釉窯変 (せゆうようへん)

窯変は、無釉の焼き締めものだけに起こるものではありません。施釉した後、窯の位置によっては、予想も付かない窯変が起きることがあります。




これは、九谷焼の九谷庄三洞 四代善平武腰昭一郎作の、窯変茶碗です。九谷焼とは、全く違う様式の作品で、本当に、これが九谷焼?と思われるような作品ですが、武腰昭一郎さんは、いくつか、この窯変茶碗を出しているようですが、製法は、ちょっと予想が付きません。(「武腰昭一郎作・窯変茶碗」参照)



これは、岡山県倉敷市にある天神窯でみた、岡本篤作、「玳玻盞天目茶碗(たいひさんてんもくちゃわん)」です。これも、施釉窯変で出来上がったもので、安定して焼き上げるのに、相当苦労したという話でした。(「
岡本和敏作・天神窯のぐい呑み」参照)

7. 油滴天目 (ゆてきてんもく)

油滴天目は、施釉窯変の一種で、黒釉に酸化コバルトや酸化第二鉄を配合して焼き、油滴に似た黒い地に銀色に輝く斑紋(はんもん)を浮かび上がらせたものです。国内での作家は、十数名足らずと言われ、難易度の高い焼き物です。



これは、京都在住の鎌田幸二(かまだ こうじ)作、油滴天目ぐい呑みです。翠青色を出した窯変翠青天目に近いと思います。鎌田さんは、窯のどこで窯変が起こるかを研究して、特殊な窯を作って、焼き上げています。本来、油滴天目は、窯の一部分で、窯変が起こって、偶然出来るものですが、その確率を高くされています。(「鎌田幸二作・油滴天目ぐい呑み」参照)

 

広島県にある禅定庵・呉峯窯(ごほうがま)、黒川清雪作の油滴天目釉のぐい呑みです。こういった油滴天目は、窯の中の一部だけで窯変が発生して出来ると思われています。(「黒川清雪作・呉峯窯のぐい呑み」参照)

8. 梅華皮 (かいらぎ)

梅華皮とは、釉薬がきれいに溶け切れず、鮫肌状に「縮れ」が出来て、粒状になったもので、その状態が鮫皮に似ているのでカイラギと呼ばれています。本来は、焼き損じなのですが、高麗茶碗の高台脇は、見所となっています。



これは、石見焼桝野窯で焼かれた、升野茂作のぐい呑みですが、かいらぎは、高台付近で出来やすいとされ、この作品は、全体をかいらぎ状にしているのですが、特に、高台付近の景色は、良くなっています。(「升野茂作・石見焼のぐい呑み」参照)

近年では、意図して、かいらぎを演出して、景色としているものも多いようです。



これは、萩焼大桂庵樋口窯樋口大桂さんの、鬼白(おにしろ)という技法で作られたぐい呑みで、藁灰釉をかいらぎ状にしています。(「萩焼・鬼白のぐい呑み」参照)



こちらは、岩国焼山田象陶作・吉香窯ぐい呑みで、白釉をかいらぎ状にしています。山田さんは、この釉薬を、岩国城にいる白蛇にちなんで、「白蛇釉(はくだゆう)」と名付けています。(「山田象陶作・岩国焼のぐい呑み」参照)

本来は、「焼き損じ」の「かいらぎ」ですが、窯変の一種として、ここで取り上げました。

                                                (記 : 2012年9月4日)

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