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黄鍾九作・現代高麗青磁のぐい呑み

黄鍾九(ホワン・ヂョング)作、現代韓国高麗青磁の、雲鶴紋ぐい呑みです。 







大きさは、径:5.7センチ、高さ:3.6 センチ、高台径:2.6センチぐらいで、共箱、栞付きです。

高麗青磁の定番模様である、飛んでいると、を描いたぐい呑みです。鶴の白い部分と、雲は、白化粧土を埋め込んだ象嵌技法によるものです。

このぐい呑みは、栞から、北九州市にある、陶磁器を中心とした美術品・海外民芸品・絵画その他を取り扱っている徳聖陶磁社が、輸入販売したものと思われます。

現代韓国では、1960年代から再興された高麗青磁の、電気炉で作られた汎用品が、お土産品用に大量に作られており、そのせいで、高麗青磁自体の価値も下げています。

そういった中で、作家もののぐい呑みが手に入り、ぐい呑みコレクションに加わったことをうれしく思っています。

★ 高麗青磁とは ★

高麗青磁(こうらいせいじ)とは、朝鮮半島の高麗時代(918年 - 1391年)に製作された、青磁釉を施した後、強火度の還元炎で焼いた磁器のことです。

10世紀頃より、中国・越州窯の影響を受けながら、全羅南道の康津と、全羅北道の扶安辺りで、高麗青磁が出現したとされています。

12世紀には、「翡色青磁」なる高麗独自の青磁をつくりだすようになり、全盛期を迎えます。

最も注目されるのが、象嵌青磁で、素地の表面を刻み、白土・赤土などをその部分に嵌め込んで文様をあらわし、最後に青磁釉を掛け焼成しました。


    高麗青磁象嵌 雲鶴文 碗 (12世紀中葉) (大阪市立東洋陶磁美術館蔵)

その技術は、日本でも手本にされ、熊本県八代市の高田焼(こうだやき)でも、その手法が取り入れられています。(「高田焼の象嵌盃」参照)

その他、釉下に鉄絵で文様を描いた青磁鉄絵、銅系の彩料を用いて紅彩を施した青磁辰砂など、様々な装飾技法が生み出され優品を産していきましたが、次第に衰え、高麗も末期となると作風も変化し、時代の終わりとともに、高麗青磁は、粉青沙器へと移り変わりました。

高麗青磁の衰退の原因は、モンゴルによる侵入に伴う社会の混乱や、大量生産に伴う品質の劣化などが考えられていますが、よくわかっていません。

最盛期の高麗青磁の作品は、あまり多くは残っておらず、その為、大変高価なものになっていましたが、1983年に、韓国の莞島沖で高麗時代の船が発見され、3万点以上引き上げられたために、なんでも鑑定団に出品された、海揚がり高麗青磁には、本物であっても、20万円ほどの鑑定価格に留まっています。



★ 復興高麗青磁 ★

朝鮮の陶磁器の歴史では、高麗青磁の後、李朝白磁を中心に、輝かしい陶芸史を刻んでいましたが、李朝末期(幕末〜明治)には、清国からの軍事侵略によって衰え、ついには、日本に侵略されて、李朝は滅び、日本の統治期間(1910年〜1945年)の間に、朝鮮の焼きものは、壊滅状態になりました。

戦後、1960年代に入って、壊滅状態だった朝鮮陶磁を再興すべく、各地の大学で努力がなされ、ついに再現に成功し、現在では、100窯くらいで、高麗青磁や、李朝白磁・青花、三島、刷毛目、粉引き等の技術が、再興されています。

その中でも、韓国の陶磁器の里、利川 (イチョン)で、1960年に海剛青磁研究所を設立し、高麗青磁を、現代に復元した陶工が、初代柳 海剛(ユ ヘガン 本名:柳根N)氏で、18歳の時から、高麗青磁の復元を目指し、1960年に復元した後、1964年には自らの窯を開き、1993年にお亡くなりになっています。

★ 陶工 プロフィール ★

 黄 鍾九  (ホワン・ヂョング)  (1919〜2003)

1919年 京畿道工業研究所陶磁器研究員の黄仁張の長男として京城に生まれる
       終戦直前、父の要請で愛知県瀬戸に陶芸研究のため来日。
1958年 梨花女子大学校美術大学教授
       同大学陶芸研究所長、韓国現代陶芸家会会長を歴任
1984年 大学を退職後はソウル近郊に築窯、高麗陶磁の制作に専念
       ソウル特別市文科賞、大韓民国大統領褒賞受賞
2003年 永眠

韓国国展招待作家・審査委員、大韓民国工芸会顧問
東京、大阪、九州、北陸などで個展
                                               (記 : 2015年3月11日)

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