1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見で、西洋人が持ち帰った「タバコ」は、100年も経たないうちに、極東の日本へ達するほど、早い速度で世界中に広まりました。
このタバコが、色々な地域で、独特の文化の華を咲かせるのですが、その中に、「水パイプ」があります。
水タバコ、水煙管(みずきせる)とも言われていますが、その「水パイプ」についてのお話です。
水パイプというと、多くの方が思い出すのが、「シーシャ」と呼ばれている水パイプではないでしょうか?
主に、中近東で使われているもので、右のような形状のものです。
「シーシャ」とは、エジプトを始め、北アフリカのマグリブ諸国で主に用いられる名称であり、ペルシア語で「ガラス」を意味する(シーシェ)が語源だと考えられています。
レバノンでは「ナルギレ」、インドでは「フーカ」、ペルシアでは「カリヤン」などと呼ばれています。
英語圏では、インドから、植民地期に伝わったことから、「hookah」(フーカー)が、現在、広く用いられる名称となっていますが、文字通り、「Water
Pipe」でも通じます。
水パイプ(水タバコ)の起源は、よくわかっていませんが、ココナッツを刳り貫いて使ったものが、原型となり、現在のような形状のものは、約500年以上前に、高度な文明を誇っていたオスマン帝国(現:トルコ)で、発明されたとされています。
その後、中近東や、インド・中国に伝わり、それぞれの地域で独自の発展を遂げました。
その原理は、みな同じで、たばこの煙を水にくぐらせて冷やし、味をやわらげるという工夫に基づいています。
★ チャイナ・ブラス ★
私が、今回購入したのは、トルコで発明された水パイプが、中国で発展したもので、「チャイナ・ブラス」というものです。文字通り、ブラス(真鍮)で作られており、「水煙(すいえん)パイプ」とも言います。
大きさは、高さ:約24.5cm 幅:約7cm 奥行き:約3.5cm
で、雁首、吸い口、たばこ入れは、真鍮製のようですが、本体は、銅製のようです。また、装飾の凝った真鍮製の吸い口が付いていますが、どう使うのでしょう?
円筒形の筒に刻みタバコを入れて、持ち歩き、水を入れないと普通のキセルとしても使えますので、携帯用のたばこ吸引器として使われたようです。吸い口を繋げている紐が、それほど痛んでいませんので、時代は、そんなにありそうもなく、昭和の戦後のものだと思います。
汎用品の「チャイナ・ブレス」は、中国で多く作られ、日本にもたくさん輸入されていますが、これは、大量生産品とは少し違うようです。
トルコで発明された水パイプですが、シルクロード、又は、南海路を通して、伝わった中国では、真鍮や、錫の加工技術が進んでおり、シーシャのようなガラスや陶器を使うのではなく、金属を使いました。
これは、すでにあった煙管(キセル)の影響があったのではないか?と想像していますが、その使い方も、キセルに似ています。
その使い方
ですが、
@ 水パイプから、雁首部分を外す。 A 本体へ水を入れる。
B 雁首部分を差し戻して、火皿に、両切りたばこ又は、刻みたばこを入れて、マッチ等で火をつけ、喫煙するというものです。
真鍮は、ガラスのように透明性がありませんので、どこまで水が入っているのか?わかりにくい点が問題ですが、予め、適量になる量を測っておいて、その都度、その適量を入れるようにしなくてはいけません。
雁首が、水の中に浸かっていなくては、水パイプにならないからです。
「チャイナ・ブラス
」の良い点は、携帯に便利であるということで、キセルが、直接タバコを吸うのに対して、「チャイナ・ブラス」は、水のフィルターを通して、タバコを吸っているという感じになりますね。
ただ、紙巻たばこでは、タールが10mg以上のものでないと、水に煙が溶けてしまい、何も出てきませんので注意してください。国内産の両切りたばこでは、ショートピースやゴールデンバットなどが向いています。びっくりするほどクールな煙
が楽しめます。
チャイナ・ブラスは、色々な形状のものがありますが、有名にしたのが、阿片戦争で、下のような煙管を使って、アヘン
を吸っていました。
アヘン煙管いろいろ
当時のアヘンは、アヘンといっても、現代のような精製された上質でなく、練りアヘンで、直接吸うと効きすぎるので、水パイプを通したとされています。
日本においては、「煙草の文化」は、茶道とも一緒に発展し、江戸時代中期に、独自に発展した細刻みタバコと、小さな煙管の組み合わせが気に入ったのか?、この水パイプは、受け入れられなかったようです。
尚、水パイプを使うと、水を通過することにより紫煙は冷え、ニコチンやタールなどの有害物質を濾過するとされていますが、私は、元々、「タバコは無害である」と思っていますので、その効果の程は、定かではありません。
★ シーシャ ★
さて、一般的に水パイプといわれている「シーシャ」についても、取り上げておきます。
シーシャと呼ばれる水パイプは4つの部分からできています。
底の部分は、ガラス製で水が入ります。この部分はシーシャの主部分である真鍮の(ステンレス鋼の物もありますが)上部へとつながっています。
「ライ」と呼ばれる先端に、吸口が付いたホースを通して吸引した時、この調節装置がたばこから出る煙を取り込みます。
この装置全体は、ガラス、真鍮、金、銀、木、籐など様々な素材で出来ており豪華な装飾が施されています。
市販の「シーシャ」
★ シーシャの使い方 ★
シーシャの使い方は、はじめにボトル内部に水を入れます。
火皿側の管が水に浸かり、吸い口側の管が浸からないように水を入れます。
このとき注意したいのは、吸い口側の管からある程度、ボトル内の水位を離さなければならないということです。これは、あまりにも近くに水位があると、吸い上げたときに吸い口側に水が入ってしまうためです。
つぎに、火皿に適当な大きさのパイプスクリーンをセットし、ハーブをのせて上から火であぶるようにします。
吸い口をくわえ、空気を吸い込むことで、火がハーブを燃やし、煙を吸い込むことが出来ます。吸い方は紙巻きタバコとは違って、深呼吸をするように深く吸うのが普通です。
水パイプ用のたばこは、「ムアッセル」と呼ばれ、右の画像のようなもので、煙草を糖蜜などで固めたもので、様々なフレーバーがあります。
世界中で、最もよく知られている水たばこの「ザグルール」のように自然で素朴な味わいの物もあれば、「アップルトファーハ」のようにストロベリー、ミント、アプリコット、バラなど数多くの香りが揃っている物もあります。
尚、日本では、水パイプ用のタバコは作られていません。
現在は、上の写真のように、「ムアッセル」を乗せたあと、アルミフォイルで覆い、爪楊枝で穴を開けた後に、専用の炭を乗せて、吸引するというのが、一般的ですが、私の疑問は、アルミフォイルがなかった昔は、どうやっていたのだろう?ということです。
恐らく、当初は、直火だったのだと思いますが、「ムアッセル」に糖蜜が使われるようになって、火持ちが良くなって、長く吸引できるようになり、炭を使うようになったのでは?と想像しています。
シーシャといえば、下の写真のようなアラビアンが優雅に煙草を吸っている様子を想像しますよね。
1時間くらい、火持ちするようですので、優雅な時間を、ゆっくり過ごすのも、また、「粋」かもしれませんね。
こちらの女性は、イラン人です。水パイプを楽しんでいるあやしい雰囲気が、何ともいえません。(笑)
(記 : 2012年11月17日)
追記 : ■ ラオス製・水パイプ ■
ラオスのヴィエンチャン空港で買った水パイプです。
大きさは、径:6cm、高さ:7.5cmで、パイプは取り外しのできるようになっています。本体は、陶器製で、スクリーン部分にたばこを乗せて、直接火をつける構造になっています。
ラオスでは、キセルを使う習慣があるようで、ラオス国立博物館でも、あまり陶磁器の展示がない中、陶器製のパイプキセルが、幾つか展示されていました。
たばこは、コロンブスのアメリカ大陸発見で、西インド諸島から、持ち帰ったものが広まったものですが、1500年代後半には、すでに、陶器製のパイプが使われています。(「パイプたばこの文化」参照)
キセルの語源は、カンボジア語のクッシュル(パイプ)と言う言葉があり、それがなまってキセルとなったというのが正しいとされていることからも、この地方には、たばこの文化があるようです。
(追記 : 2013年10月10日) |