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香川漆器・蒟醤(キンマ)の香合

香川漆器蒟醤(キンマ)の香合です。













大きさは、径:6cm、高さ:2.5cmで、共箱付きです。

香川漆器は、彫漆(ちょうしつ)、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、後藤塗、象谷塗(ぞうこくぬり)の5つの技法が、国の伝統的工芸品に指定されていますが、この香合は、蒟醤という技法で作られているものです。

漆器は、どうしても、盆、菓子器、椀、皿、茶托、硯箱等が多くて、小物の香合や、棗、ぐい呑み等が少なく、小物を見つけにくいのですが、今回、小物の香合を手に入れることができて、喜んでいます。

この作品は、栃を刳り貫きしたものに、黒漆で下塗した後、唐草紋を、刀(けん)で線掘りし、朱漆を象嵌して、研ぎ出したものだと思います。

★ 香川漆器とは ★

香川漆器(かがわしっき)とは、香川県高松市を中心とする地域で作られている漆器で、「高松漆器」、「讃岐漆器」とも呼ばれます。

江戸時代前半の寛永15年(1638年)に、水戸徳川家から高松藩に入封した松平頼重 が、漆器や彫刻に造詣が深く、これを振興したことに始まります。江戸時代末期、玉楮象谷(たまかじぞうこく)は、大陸伝来の彫漆(ちょうしつ)、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)などの研究から独自の技法を創案し、やがて香川漆芸の礎を築きあげました。

現在では、高松を中心にした香川の漆器は、年産約250億円、中央展に入賞、入選クラスの漆芸作家は70余名、組合員約70社、漆器関係の従業員数約2000名、販路は北海道から沖縄まで、というように文字通り漆器王国を誇っています。

また、重要無形文化財蒟醤技術保持者(人間国宝)になった故磯井如真や、故音丸耕堂(重要無形文化財彫漆技術保持者)の活躍など、多くの巨匠を輩出しています。

★ 蒟醤(きんま)とは ★

蒟醤(きんま)という技法を説明しておきます。

技法は、上記でも説明していますが、漆の塗面に、剣(けん)という特殊な彫刻刀で文様を彫り、その凹みに色漆(いろうるし)を埋めて研ぎ出し、磨き仕上げるもので、私のものは、朱色だけを象嵌していますが、単色ではなく、青、緑、黄等、多色の色漆を象嵌したものも多いようです。

中国の古代漆器の線刻技法(沈金)が東南アジアに伝播し、タイで、金粉の代わりに色漆を使った技法が確立され、定着したものとみられています。現在でも、タイミャンマーの漆器で、使われている技法です。

タイでは、キンマの葉に水溶きした石灰を塗って、ビンロウの乾燥した実を包み、ガムのように噛む風習があります。

右の写真は、タイで売られているもので、ビンロウの種子を薄く切ったもの、キンマの葉、石灰の3点セットで詰めたパック商品になっています。

これをキンマークと称し、この嗜好品を入れる容器(下の画像参照)と、更に容器に施された漆芸技法を含めて「キンマ」と呼ぶようになりました。





上のキンマは、ミャンマーのヤンゴン市の、国立博物館の売店で購入したキンマです。2013年6月にミャンマーを訪れましたが、タイよりも、漆器産業は、盛んな印象を持ちました。(「ミャンマー漆器のぐい呑みと香合 」参照)

小さな蓋物のキンマは、近世以降、日本にももたらされ、茶人の間で珍重されました。時代は、スンコロク(宋胡録)と近く、スワンカローク窯が訛って、スンコロクになったのと、似ていますね。(「スンコロク(宋胡録)の香合」参照)

わが国では、江戸末期に讃岐・高松藩で活躍した漆芸家・玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、蒟醤技法を積極的に活用しましたので、この技法は、香川地方で伝承され、人間国宝を含む名匠が生まれています。
                                                (記 : 2013年3月10日)

追記 :

2013年12月、ミャンマーのバガンを訪れ、ミャンマー漆器の工房を訪問しました。その際の記事は、「バガンで、ミャンマー漆器を学ぶ 」にありますので、そちらをご参照ください。

その際、上記で記していたキンマの容器ですが、実は、香合ほどの小さなものではなく、直径20cmくらいの弁当箱サイズの筒型の容器で、3段式になっており、一番下に葉っぱ、2段目にビンロウの実、そして、一番上に、石灰を入れる容器であることを、地元の方から知りました。

残念ながら、容器の写真を撮るのを忘れてしまいましたが、ガムのようにして楽しむ、タイで、「キンマー」、ミャンマーでは、別の呼び方をしていましたが、キンマーと同じものを買いましたので、ご紹介します。





おばちゃんが、キンマの葉っぱに石灰を塗って、その上に、ビンロウの実を乗せて包んでくれます。



これが、このおばちゃんから買ったキンマー(タイ語)です。これを、ぱっくり口の中に入れて、ガムのようにして楽しむ嗜好品です。

6つで、20円ほどでした。タイやマレーシアにもありますが、今では、あまり見掛けなくなっています。しかし、ミャンマーでは、いろいろなところで売っていました。

これを入れる容器が、蒟醤(キンマ)の語源になっているのですから、おもしろいですね。
                                           (追記 : 2013年12月19日)

追記 2:

香川漆器の「象谷塗」と、「独楽塗」の菓子器を購入しました。その特徴を、まとめてありますので、「香川漆器・象谷塗と独楽塗」をご参照ください。

 象谷塗

 独楽塗

                                         (追記 : 2014年5月3日)
最終更新日 : 2016年2月8日

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