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村上木彫堆朱?の漆硯

村上木彫堆朱(むらかみ きぼり ついしゅ)と思われる、漆硯(しっけん)です。















大きさは、長さ:11cm、幅:7cm、高さ:2.5cm、重さ:295gで、硯の部分は、石材を使用の上、朱漆を塗り、蓋は、木製で、村上木彫堆朱 で出来ています。

(すずり)は、「硯(すずり)と墨の話」でも、取り上げていますが、材質は、石材がほとんどを占めていますが、墨汁は、墨の方が、削られて出来ますので、硯の方は、少しのザラザラした面があれば良いので、陶器や、瓦、漆器などの硯もあります。(陶硯は、「野中春甫作・翡翠窯の陶硯」参照)

 陶硯

とは言え、やはり硬い材料の方が、耐久性がいいので、材質が柔らかい漆器の硯は、大変、珍しいということです。

この硯は、墨堂に使用感はあるものの、漆器の蓋は無傷で、欠けている部分がありません。

文様は、村上木彫堆朱の定番の「山水」で、使い込まれたために、表面の光沢が増しています。

★ 村上木彫堆朱とは ★

村上木彫堆朱(むらかみ きぼり ついしゅ)は、新潟県村上市で作られている漆器で、通称、村上堆朱(むらかみついしゅ)と呼ばれていますが、堆朱(ついしゅ)ではありません

堆朱は、油を混ぜた朱漆を幾重も塗って厚い層を作り、それに文様を彫刻したものですが、村上堆朱は、木彫りをしたものに、朱漆を塗ったものです。





新潟県の村上地方は、平安時代から天然の漆の生産地として、広く知られています。漆枝は、今から600年前、京都から寺院建築に来た漆工が始めたと伝えられています。

その後、慶長年間(1592年〜1614年)以来、歴代藩主は、これを奨励し、寛文年間(1661年〜1672年)には漆奉行が設置され、漆樹栽培が一段と活発になりました。

亨保年間(1716年〜1735年)には、現在の木彫堆朱・堆黒が生産され、文政の頃には江戸詰の村上藩士、頓宮次郎兵衛は、堆朱彫の名工、東谷について彫刻を学び、次いで沢村吉四郎にも学び、堆朱彫は藩内に広められ、漆塗の技と共に次第に進歩発達して、名工有磯周斎を輩出しました。

周斎は、本堆朱の他に、存清も研究し、中国風の図案に写生を加味して品位の向上を図り、或は鎌倉彫の彫法を取捨して改良するなど技術の進歩をなして、今日の村上木彫堆朱の基礎を築きました。(存清については、「漆器(漆工芸)のはなし」参照)

その後、町民の間に広まって今日に至り、昭和51年2月には、通産大臣より、「村上木彫堆朱」として、国の「伝統的工芸品」の指定を受けています。

木製木地に細かい彫刻をすることを得意とし、その彫刻をより引き立たせる漆塗りの技術が独特です。村上木彫堆朱は、堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)、朱溜塗り(しゅだまりぬり)、三彩彫(さんさいぼり)等、6種類の技法の総称です。代表的な技法である堆朱は、朱の上塗りを艶消しで仕上げた、落ち着いた肌合いを特徴としています。

村上木彫堆朱は、木地師彫師塗師の3部門の分業で、ひとつの品を製作します。

最初に木地を作る職人が、ホオノキ、トチの天然の木を使って木地を作ります。次に彫刻する職人が、木地に直接下絵を描き、木彫を施します。その後、漆を塗る職人が、天然の漆だけを使って漆塗りを行います。厚からず薄からずに、指先に細心の注意を払いながら、辛抱強く塗りつづけ、塗りは18〜20工程もあって、完成前に、再び彫刻する職人の手で細かい部分の毛彫りを行います。

村上木彫堆朱の文様としては、私の硯の「山水」の他に、「唐草」、「花鳥」、「牡丹」、「椿」等々があります。

こうして出来た村上木彫堆朱ですが、重ね漆を彫ったものではありませんので、彫り口の断面に層が見えませんので、堆朱との差がわかります。しかし、素人では、一見して見分けることができないくらい、高度に完成された工芸品であり、使い込むほどに光沢を増していくのも、特徴となっています。

大変珍しいものが手に入ったと喜んでいます。少し、墨で汚れていますので、きれいにしてあげようかな?と思っています。
                                                (記 : 2013年5月6日)

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