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乾漆のぐい呑み

乾漆(かんしつ)のぐい呑みです。





乾漆のぐい呑み







大きさは、高さ5.5cm×直径6.2cmで、紙箱、共布、栞付きです。

乾漆って何だろう?と思って買ってみました。出品者も、いただきもので、詳細は、わからないとのことです。

製造者の名前は書いてなかったのですが、栞の住所から調べると、製造場所が、「新潟刑務所」で、Wikipediaによると、「県の伝統工芸品である木彫り堆朱を取り入れており、彫刻・漆塗りの技術習得は受刑者の社会復帰にも役立っている。」とありますので、受刑者が作成したものが販売されたものと思います。

★ 乾漆とは ★

まず、乾漆(かんしつ)とは、素材に木を使わず、石膏等で型を作り、それに漆で麻布を、一定の厚みになるまで貼り重ね、型から外して素地とする技法です。

元々は、東洋における彫像制作の技法の1つで、麻布を漆で張り 重ねたり、漆と木粉を練り合わせたものを盛り上げて像を形作る方法で、日本では、奈良時代からあったものですが、現代では、彫像に関わらず、食器やアクセサリー等にも利用されています。

産地は、漆器作りの盛んな地方が多く、輪島塗の石川県をはじめ、日本の乾漆発祥の地である奈良県、会津塗りの福島県などで作られているようです。

乾漆の特徴は、型に木を使うのではなくて、石膏や、発泡スチロールで作った型を使うので、自由な造形が可能であること、薄手の下地を作ることも可能で、軽くて丈夫なことがあげられます。

乾漆の製作工程は、次のようになります。

@ 型作り

直接、内型を作るやり方と、出来上がりの型を先に作って、石膏などで、内型を取る方法があるようです。

A 麻布貼り

型に、漆と米糊と地の粉を混ぜた下地を塗って、麻布を貼っては、また、下地塗り、麻布を貼っては、下地塗りを繰り返して、一定の厚みになるまで、重ね合わせます。麻布を貼り終わると、下のような状態になります。



B 脱型

型から、乾漆を外します。



上記の画像は、「漆職人のかぶれにっき」から、拝借したものですが、左側の4つが、型を抜いた後の状態、右側の3つが、中に型が入ったままの状態のものです。

こうして出来たものが、構造部となります。(通常の漆器は、木地です。)

C 中塗り、上塗り

器物の内側、外側を、漆で塗って仕上げます。この工程は、木地の漆器と同じです。時には、蒔絵を施すこともありますし、金彩で飾ることもあるようです。

 中塗りの工程

中塗りの後、乾燥させた後、研ぎの工程に入り、2,3度、中塗り、研ぎをし、最後に上塗りで仕上げます。

下の作品は、乾漆の抹茶碗です。乾漆は、木下地と違いますから、型を取ってしまえば、このような手捻りのような作品を作ることも出来ます。形に自由さを与えた漆器ということが出来ると思います。



私の買った乾漆のぐい呑みは、偶然、ネットオークションを見ていて、発見したものですが、また、1つ日本の文化を知ることが出来て、うれしく思っています。珍しいものだと思いますので、大切にしたいと思っています。

同様のものに、一閑張り(いっかんばり)というのがありますが、こちらは、型に、和紙を重ねて作るもので、乾漆は、和紙ではなく、麻布を使うという違いとなっています。

実は、この技法、建築資材にも使われていて、お宅の風呂は、恐らく、FRPという強化プラスチックで作られたものです。麻布の代わりにプラスチック繊維を、漆の代わりに、合成接着剤を使ったものです。こうやって、繊維質のものを重ね貼りすることによって、強度と靱性が出てきます。

現在、電池が問題になっているボーイング787も、強化炭素繊維を重ね貼りしたものです。昔からの知恵は、現代の最新鋭機にも活かされています。
                                                (記 : 2012年1月22日)

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