彫漆(ちょうしつ)とは、器物に漆を塗り重ねて厚い層を作り、これに文様を彫刻して、漆の断層を美しくみせる方法で、器物の表面が、朱の彫漆器をひろく
堆朱(ついしゅ)、黒漆を塗り重ねて彫った物を
堆黒(ついこく)、黄漆(きうるし)のものを
堆黄(ついこう)、朱と緑のものを
紅花緑葉(こうかりょくよう)といいます。
唐時代が起源と言われていますが、彫漆が盛行を見たのは宋からで、元、明、清と数々の作品を生んでいます。
禅宗の交流により、日本の寺院に僧侶の入宋、来宋のなか、宋、元の堆朱や堆黒が、他種の漆器や青磁と共に多くの物が伝来された様で、香合や盆類は、
唐物の茶道具として大切に扱われ、寺院や宮中と共に今日まで多く伝世して来ました。また、明時代の商船貿易による物もかなり有ると思われます。
堆朱をはじめとする彫漆工芸は、日本には、応仁・文明の頃(1467年〜1486年)に、その技法が伝えられ、初代
堆朱楊成が日本の堆朱工のはじまりとされています。また今日の
鎌倉彫りの原型となったものです。
★ 君台観左右帳記」(くんだいかん・そうちょうき)とは? ★
室町時代に成立した、中国伝来の絵画、工芸品の鑑定評価と、それらを用いた座敷飾の構成について集大成した秘伝書で、能阿弥によって整備され、相阿弥によって完成されたと考えられています。
(記 : 2013年5月23日)