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八雲塗の硯箱と香合

八雲塗(やくもぬり)のメジロ紋硯箱です。











大きさは、長さ:23.5cm、幅:17.5cm、高さ:3.5cmで、紙共箱付きです。

箱からは、少し年代を感じますが、八雲塗は、色漆で様々な文様を描いた上から、透漆を塗り重ねて仕上げますが、使用している内に、この透漆が光の作用で透明化することによって、年々色艶が鮮やかさを増していくのですが、まだ、透漆が、あまり透明化していませんので、ほとんど使用されず、箱に入れられたまま、長期保管されていたものと思われます。

また、近年では、栃、桜等、従来の木地の他に、金属、陶器、合成樹脂を素材として用われていますが、この筆箱は、木製で、つたに留まるメジロが描かれています。

 メジロ(Wikipedia)

八雲塗(やくもぬり)は、島根県松江市で生産される漆器で、明治時代初期、松江藩のお抱えの駕籠(かご)塗職人の坂田平一が、中国の存清塗(ぞんせいぬり)の盆を見せられ、その雅味ある手法に魅せられ、これをまねて盆を作ったのが始まりとされています。(「漆工芸のはなしー存清」参照)

坂田平一の試作品がみごとな出来であったため、唐物(からもの)(中国産の漆器)として、明治10年(1877)から19年ごろに売り出されていました。

その後も、独自の工夫を重ね、すぐれた作品を制作するようになり、これが、時の島根県知事、籠手田(こてだ)安定の目にとまり、出雲古歌「八雲立つ・・・・」、出雲の国の枕言葉にちなんで「八雲塗」と命名されました。

技法は、布着せ本堅地で、堅牢に仕上げた素地に、錆研ぎの上、中塗せずに削り墨を引き、それに錫粉で模様を描き、中へ朱、黄、茶、緑などを固練りで塗って絵付けをし、乾いたところへまた塗り、さらに乾燥した黒目漆を薄く塗って軽く炭研ぎをし、その上に、純良な天然透漆を塗り重ね、胴擦り仕上げをするというものです。

近年のものには、様々な色調の色漆の他に、青貝を埋め込んだ螺鈿や、金銀粉を用いて文様を描きあげたものもあるようです。

年月を経るごとに、仕上げ塗りされた透漆が透明度を増し、描かれた文様が色鮮やかに浮かび上がるのが、他の産地にはみられない、八雲塗の最大の特徴です。 

下の写真は、仕上がり直後の八雲塗と、3年後の八雲塗です。このように年月を経ると、全く色彩が変わってきます。私の筆箱は、まだ、仕上がり直後のような色をしています。今後、どのような色彩が現れてくるのか?楽しみです。

仕上がり直後の八雲塗  3年後の八雲塗
                                         (出展:八雲塗やま本HP

八雲塗は、昭和57年(1982)3月、島根県ふるさと伝統工芸品に指定され、椀、鉢、菓子器など日常の器から、座卓等の家具まで、巾広く製作されています。
                                                (記 : 2013年5月24日)

追記 :

八雲塗乱菊香合を入手しました。











大きさは、径:7.2cm、高さ:2cmほどの木製の香合で、共箱、共布(印なし)、栞付きです。

菊紋の中心に、青貝を埋め込んだ螺鈿が施されています。島根県松江市北堀町にある山根漆器店の制作です。松江市においては、八雲塗の製作会社は、この山根漆器店と、山本漆器店の2店だけとなっています。(他に、出雲市の「漆芸のわたなべ」があります。)

栞より、

八雲塗の特色は、各種の彩漆を用いて模様を描き、その上に良質の天然漆を塗り磨くという工程を数回繰り返し仕上げるため、完成時には、漆の下に模様の色が沈んで全体が黒っぽく見えますが、ご使用と、歳月が経つにしたがい、浮き上がるように鮮明になってくる

ということです。

確かに、まだ、この香合は、模様が沈んで見えますので、共箱の中に入れて、長く保管されていたものと思われます。紫外線に当てて、模様が鮮明になってくるのを楽しみたいと思っています。

                                            (追記 : 2014年7月18日)

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