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奈良漆器の硯箱

螺鈿(らでん)細工鳳凰紋を描いた奈良漆器硯箱です。













大きさは、長さ:24cm、幅:14cm、高さ:4cmほどの螺鈿鳳凰紋の木製硯箱で、硯と白磁の水滴が付いています。元々は、桐箱の共箱もあったと思うのですが、かなり使い込まれているいるようですので、なくされたみたいです。

奈良漆器独特の「天平文」という文様で、「正倉院写し」の作品ということだと思います。同様の作品を、新井漆器店で作られているようですので、新井漆器店の作品かもしれません。

奈良漆器は、主に、奈良の寺院向けに作られてきたこともあり、中々、汎用品にお目に掛かれなかったので、偶然見つけて、ゲットできてラッキーでした。

★ 奈良漆器 ★

奈良漆器は、奈良県奈良市で製造されている漆器で、仏教伝来を契機とした天平文化の時代以来、1300年近くの伝統があるとされています。

正倉院には、漆で絵を描いたもの、螺鈿、金銀平脱、平文など多種多様な技法を自由に駆使して、目の覚めるような美しい器物の作品が数多く収められていますが、これらは、中国から直接器物を輸入すると同時に、工人を中国から招いて製作にあたらせ、日本人に伝習させたものではないか?と思われています。



中世になると、塗師漆屋座が登場します。南都に住んで、社寺に所属し、建造物の塗師として活躍しながら、器物としての漆器も制作していました。

明治8年、正倉院宝物や社寺の什器がはじめて公開され、これらの模写事業を興して、工芸品としての奈良漆器の復興がはかられました。

しかしながら、奈良漆器を作る塗師屋は、今では数少なくなり、奈良でも、「奈良漆器 樽井」さんなど、8軒ほどしか残っていないのが現状です。

奈良漆器の最大の特徴は、天平文様と螺鈿細工で、夜光貝、アワビ貝、チョウ貝などを、模様の形に切り、桧木地に貼り、漆で埋めて研ぎ出す、伝統的な厚貝螺鈿技法を主として、硯箱、宝石箱、文箱などが作られています。



螺鈿には、様々な貝が用いられており、メキシコのあわび貝、ベトナムの夜光貝、ちょう貝、おうむ貝など、数多くの貝が世界中から集められています。

奈良漆器は、手間暇かけて作った高級品が多いことも特徴で、これは、一般向けの漆器ではなく、春日大社や奈良の大寺院の調度品等の、寺社向けの需要が多かったことがあげられるのではないか?と思っています。そのため、汎用品が少なくて、手に入れにくい漆器になっています。

★ 奈良漆器の製造工程 ★

 『布貼り』

器体に、麻の布を漆で塗りこめ、木目が浮き出てこないようにします。



 『貝貼り』

麦漆を塗った上に、貝をひとつひとつ貼りつけていきます。



 『地粉つけ』

貝を貼り終えた後、漆に土を混ぜた地粉(じのこ)が塗られます。



 『錆研ぎ』

細かい土を混ぜた錆と呼ばれる漆を塗り、研ぎ出して行きます。



 『塗り』

出来上がった下地に、いよいよ漆を塗っていきます。



 『蝋色磨き』

乾いたあと、鹿の角を粉にした、きめの細かい研磨剤を使い、手で直接磨きます。





20分ほど、蝋色磨きをすると、黒漆の光沢が出てきて、完成です。(画像出典:「手仕事にっぽん」)

画像で作業をされているのは、「奈良漆器 樽井」の樽井喜之さんで、何百年もの歳月に耐える漆器を作りたいと、考えて作られているそうです。
                                               (記 : 2014年9月17日)

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