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煎茶道のはなし

煎茶道(せんちゃどう)に関する記事が、バラバラになってしまっていますので、まとめてみました。

★ 煎茶とは ★

煎茶(せんちゃ)とは、緑茶と呼ばれる、摘み取った直後に発酵を止める不発酵茶のうち、新芽が出てから摘み取りまでずっと日光を浴びせて育てたもののことを言います。

特徴は、程よい渋みと爽やかな香りがあり、すっきりとしていて、日本のお茶の流通量の80%以上を占める一番愛飲されているお茶で、一般的に、日本茶と言っているお茶のことです。



★ 日本の煎茶道 ★

煎茶道(せんちゃどう)とは、急須や宝瓶等を用いて、煎茶や玉露などの茶葉に湯を注いで飲む形式を採り、型や物よりも自由な精神を重んじ、煎茶を味わいながら人との対話や書画を楽 しむことに重きを置いています。

形式は、明時代の中国よりもたらされたもので、中でも承応3(1654)年に来日した、隠元隆g(いんげん・りゅうき/1592〜1673年)は、煎茶を飲むための道具を携え、煎茶を愛好していたことで知られています。

そのため、煎茶道の開祖は、四代将軍家綱にも招かれ、京都の宇治に黄檗宗の黄檗山萬福寺を開いた、この隠元隆gとされています。

その頃、煎茶自体が、当時の最新の中国文化であったことなどから、形式にとらわれずに煎茶を飲みながら清談を交わすいわゆる「煎茶趣味 」が文人の間で急速に広まりました。

 こうした風雅な煎茶を人々に広めたのが、中興の祖、売茶翁(ばいさおう/1675〜1763年)でした。売茶翁は、それまで中国文化の模倣の域を出なかった煎茶趣味の世界に、独自の方向を示しました。

その後、江戸時代の後期になると、文人たちの自由な茶の一方で、煎茶にも、一定の形式や礼法を定める「煎茶道」が確立され、従来の茶道と同様に、家元制度による流派 が生まれ、現在、全日本煎茶道連盟には、39の流派が加盟しているほか、連盟に非加盟の小流派も多数あり、流派が乱立している状態が続いています。

★ 煎茶道のお道具 ★

上記のように、煎茶道には多くの流派があるために、お道具も、それぞれ流派によって違います。

ここでは、織田流のもので、どういったお道具が必要かを説明します。(画像出典:織田流HP)



★ 煎茶碗 ★

煎茶碗(せんちゃわん)は、煎茶を飲むための茶碗で、飲み口が外に反っているのが特徴です。通常、5客か、6客がセットになっています。

淹れたお茶の色がよくわかるように、見込みが白のものが好まれ、京焼や、有田焼の磁器が使われることが多いようです。

大きさは、流派によりますが、猪口くらいの小さいものから、ぐい飲みほどの大きさのものもありますが、湯呑までは大きくありません。



私の煎茶碗は、3代近重治太郎作、小代焼(しょうだいやき)の煎茶碗6客揃いで、1つの大きさは、径:5cm、高さ:4cmほどの猪口サイズです。

★ 茶托 ★

茶托(ちゃたく)とは、湯茶の入れる茶碗の下に敷く受け皿のことで、流派によっては「托子」「茶台」「茶托子」「納敬(のうけい)」などと呼ばれることもあります。

 小笠原流の茶托

明から伝来した煎茶法を起源とする日本の煎茶道では、元々茶托に当たる物はなかったと考えられていますが、江戸時代中期に、清から杯と杯台が輸入されるようなり、日本の煎茶法で、この杯を茶碗に転用する際に、杯台が茶托に転じたようです。

中国からの輸入品はほとんどが、錫製でしたが、その後、日本においては、伝統工芸の漆器の木製茶托が発達しました。茶托の材質は、錫の他に、金・銀・銅・木製・漆器・藤・竹・陶器・磁器・ ステンレス・鉄・ピューター・真鍮・アルミ・合成樹脂など、色々なものがありますが、日本の煎茶道では、錫製の茶托を最上としているようです。

錫製の茶托については、煎茶道では年代を経て黒ずんでいる物、また、楕円形より円形の方がいいとされているようですが、流派によっては、小判型を使うこともあります。

古物には、中国製が多く、「張星栄造」「肖天泰」「乾茂号造」などの銘が入っている物、国産では「泰造六造」の物は人気が高いようです。



私の茶托は、古錫製小判型茶托(ちゃたく)5枚セットで、大きさは、長さ:10.7cm、幅:7.4cm、高さ:2.3cmほどで、裏に印があります。

★ 宝瓶 ★

宝瓶(ほうひん)、又は、泡瓶は、急須の一種で、大きな特徴は、取っ手がないことで、絞り出し急須ともいわれます。

基本的に、玉露や煎茶のような50度〜60度の低温度で入れるお茶に適し、紅茶や中国茶(青茶)をいれる時には使用しません。

通常の急須と比較して注ぎ口が大きく、容量は大きくても、250cc程度で、小さな煎茶椀5杯分が入る程度の80cc〜150cc程度の容量のものが多く、一煎毎に、全部のお茶を、茶海(ピッチャー)、又は、茶碗に注ぎ出すのも特徴です。

また、取っ手がないことから、収納や、茶殻を捨てるのも簡単だという利点もあり、大きさも小さいことから、携帯に適しているとして、旅行用の煎茶道具によく使われています。

起源については諸説有りますが、中国茶を抽出する道具の一種の「蓋椀」(がいわん)が元になったという説がありますが、はっきりしていません。



私のものは、金重利陶苑金重陶弘作、備前焼宝瓶(ほうひん)で、大きさは、長さ:10.6cm、口径:9.0cm、高さ:7.4cm、容量が100cc程度で、「陶弘」の陶印があります。



上の写真のようにして、お茶を注ぎます。

★ 湯冷まし ★

湯冷まし(ゆざまし)は、煎茶道における茶道具の一つで、茶を入れるためのお湯を冷ます道具です。

形状は、ピッチャーから取っ手を外したようなものや、片口鉢のようなものがあります。湯の温度を効率よく下げる ため、底より口を大きく作ってあることが特徴です。 ...

煎茶を淹れる温度は、50〜60度が適温とされますので、熱いお湯を少し冷ます必要があります。ボーフラや釜から取ったお湯を一旦、湯冷ましに入れ、20度ほどの温度を下げて、急須又は、宝瓶に注ぎます。



私の湯冷ましは、備前焼で、備州窯片口鉢です。

宝瓶と、湯冷ましは、同じやきものが、相性が良くオススメということですので、備前焼の宝瓶に、備前焼の湯冷ましを使っています。



片口鉢が、使いにくかったので、こちらの生陶衆啓(きとうしゅうけい)作・備前焼湯冷ましを、手に入れました。大きさは、口径:10cm、高台径:7cm、高さ:5cmほどで、登り窯で焼き上げたものです。

★ 煎茶盆 ★

煎茶道の場合、「盆点前(ぼんてまえ)」というお盆を使用した点前が一般的で、幾つかの種類のお盆を使用します。

一文字盆(いちもんじぼん)とは、煎茶を運ぶための細長いお盆で、小さな煎茶のお茶碗がちょうど五つ 並ぶサイズになっています。その長さは、1尺2寸(36cm)が基本となっており、およそ、女の人の腰の幅のサイズです。運ぶ際の持ちやすさと見栄えとを考慮して、身体との関係で導き出された寸法と考えられています。

 一文字盆と煎茶碗

拭き漆(透明)を塗られたもの、黒漆や朱漆で仕上げられたもの、肥松と呼ばれる松の樹脂がコーティングの役割を果たして、飴色に光沢を放つもの等々あります。形は、角が角になっているもの、丸になっているものなどがあります。



私のものは、木彫刳貫(きぼりくりぬき)一文字盆(いちもんじぼん)で、大きさは、長さ:39.0cm、幅:10.5cm、高さ:2.0cmほどで、天然木の刳貫盆で、塗装はされておらず、木地のままです。

煎茶盆には、他に、宝瓶や湯冷ましを受けるお盆もあります。



私のものは、煎茶用の老松刳り貫き二文字盆で、大きさは、長さ:30.6cm、幅:22.5cm、高さ:3.3cmほどで、松の無垢材を刳り貫いた盆です。

こちらは、松材小判型煎茶盆で、大きさは、24cm×14.5cmで、裏に「大山」の印があります。



丁度、湯冷ましと、宝瓶の2つを乗せるのにぴったりサイズになっています。

★ 茶壺(茶筒) ★

茶壺(ちゃこ、ちゃつぼ)は、煎茶道で使用する道具の一つで、茶葉を入れて保存に使う道具です。但し、大量の茶葉を入れる容量の物は少なく、お手前に使う数回分の茶葉しか入れておかないのが通例です。

流派によっては、「茶心壺(ちゃしんこ)」「茶入」「葉茶器」「茶鑵」「茶瓶」「茶盒」とも呼ばれます。

錫製が、最上とされていますが、これは、最初、明や清から伝来したものが錫製だったからということもありますが、それ以上に、錫製の物は中の茶葉がしけらず、品質を長く保つことが出来るという実用上の理由からのようです。

しかし、現在では、見た目も華やかな、陶磁器製の茶壺をお手前に使うことが多いようです。



私の茶壺は、藤木伝四郎商店作、樺細工(かばざいく)(桜皮細工)の茶筒を使っています。秋田県仙北市角館(かくのだて)の、国の伝統工芸品の樺細工の茶筒で、マレーシアで買った錫製の茶壺も持っていますが、やはり、日本のものが似合うかな?と思っています。

★ 茶合(ちゃごう) ★

茶合(ちゃごう)は、煎茶道で使用される道具の一つで、流派によっては、「茶量(ちゃりょう)」「仙媒(せんばい)」「茶則」「茶計」とも言われます。

茶葉を、茶壺から取り出し、急須や宝瓶に投入する際に使い、先述の形状により、茶葉の量を目で確認することが出来る便利な道具です。

茶合(ちゃごう)は、お茶の量を計る小さな道具ですが、材質は、竹を切っただけのシンプルなものから、他に木製、金属製、象牙製、玉製、純銀製の豪華なものまで、多種多様のものがあります。



私のものは、宝寿堂政井軒作、煎茶用の斑竹茶合(まだらちだけちゃごう)で、大きさは、長さ:14cm、割り口:4.4cmほどの斑竹で作られた節なし茶合で、上の茶葉の量が、5g程度です。一度、秤で計っておくと、次からは、目分量で茶葉の量がわかるのでいいですね。

★ 水差し(水注) ★

水差し(みずさし)は、水注(すいちゅう、みずつぎ)とも呼ばれ、煎茶道で使用される、水をつぎ足すための道具です。

煎茶道の流派によって、「水罐」「水指」「水灌」「水次」「水滴」「注子」などと呼ぶことがあります。

色々な種類のものがありますが、陶磁器のものが多いようです。



私の水差しは、大きさは、口径:8cm、底径:9cm、高さ:17cmほどで、恐らく、益子焼だと思います。

★ 巾筒 ★

巾筒
(きんとう)とは、茶道や煎茶道で、茶巾を入れる道具のことです。

茶道の場合は、巾筒を使うのは、ほぼ茶箱手前に限られますが、煎茶道の場合は、すべての手前に巾筒を使います。

また、煎茶道の場合は、盆を拭くためのやや大きめの茶巾を別に準備しますが、これを入れるものは「盆巾筒」(又は、盆巾入れ)と呼ばれて、茶巾筒とは区別されることが多いようです。



私の巾筒は、茶巾筒の大きさが、口径:4cm、高台径:3cm、高さ:5cmで、盆巾筒の大きさが、口径:5cm、高台径:4.5cm、高さ:5cmで、「平山」と銘が入っていますので、京焼だと思います。

★ 茶巾とは ★

茶巾(ちゃきん)とは、茶道の点前の途中などで茶碗を拭くために使う布です。

白い麻布を用いることが多く、奈良晒(ならざらし)は、高級品として重宝されます。用途や流儀などによりそのサイズは異なりますが、一尺×五寸(30cm × 15cm)ほどの長方形のようです。茶巾盥で水に浸したあと、絞って使用します。

奈良晒  : 江戸初期以来,奈良県月ヶ瀬地方から産出した天日晒しの高級麻布です。



★ 盆巾とは ★

煎茶道の一部の流派では、盆巾を使う流派もあります。

盆巾(ぼんきん)とは、お盆と茶托を拭くために使う布ですが、白いものもありますが、青い木綿のものが多いようです。大きさは、茶巾よりも、少し大きめで、22cmX37cm程度です。



★ 涼炉 ボーフラ ★

涼炉(りょうろ)は、煎茶道で使用する湯を沸かす道具の一つで、「焜炉」「茶炉」「風炉」とも言われます。

元々は、中国で茶の野点用に野外で火をおこすために考えられた、携帯湯沸かし器で、古くなったり、使い終わった後は廃棄されるのが慣例でしたので、手の掛かった彫刻や造形を施されませんでした。

江戸時代に、日本に煎茶法が伝わったときに、涼炉も一緒に伝来しましたが、舶来物であること、素焼きという素朴さが文人達の心を捕らえて、珍重されるようになりました。

その後、清時代中期には、中国本土でも凝った作りのものが生産されるようになり、また日本でも注文に応じて装飾に富んだ物が生産されるようになりました。

仕組みは、七輪と全く同じで、正面に風を送り込むための穴「風門」、上部に炭を入れ、ボーフラを載せる穴「火袋」があります。

ボーフラは、湯沸かし道具の一つで、素焼きの土瓶です。この名称は、形状がカボチャの実と似ていたために、元々は、ポルトガル語で「カボチャ」を意味していた単語の、「abobora」が転用されたという説が有力になっています。

煎茶道では、「金属製の湯沸かしは茶の味が壊れる」として、土瓶、とくにボーフラを使って沸かした湯を尊重するため、鉄釜を使用しない流派が多いようですが、茶釜を使う流派もあります。



私の場合、南部鉄瓶と、私の発案のIHヒーターを使った置き炉を使っています。





★ 建水 ★

建水(けんすい)とは、茶席中で、茶碗をすすいだ湯水を捨て入れるための器です。建水は、最も格の低い道具として、点前の際は勝手付に置かれ、客からは見えにくいところで使われ、会記でも、最後尾の一段下げたところに記されます。古くは「みずこぼし」といい、水翻、水覆、水建、水下などと書きました。今は、建水と書いて「けんすい」と呼びます。通称は「こぼし」といいます。

格下とみなされ、客側から目につかず、地味な存在ではありますが、「茶に近い 道具の第二位」とも言われており、大切な道具には違いありません。



私のものは、中川浄益(なかがわ じょうえき)作?、唐銅エフゴ建水(からかねエフゴけんすい)で、大きさは、直径:約13cm、高さ:約10cmほどで、「浄益」の掻き印があります。

これで、一応煎茶道のお道具が揃いました。

★ 煎茶の淹れ方 ★

煎茶道は、前述の通り、多くの流派があり、それぞれ淹れ方が違います。しかし、基本的な流れは同じですので、追っていきましょう。

@ 茶器を洗う/茶器を温める

まず、熱いお湯を、湯冷ましに入れ、温度を下げます。そして、次に、急須、又は宝瓶に、すべてのお湯を入れます。次に、煎茶碗にそのお湯を入れます。茶碗が温まったら、建水にお湯を捨てます。





次に、煎茶碗を、茶巾で拭い、清めます。



一連の動作は、まず、茶器類をお湯で洗う目的と、茶器類を温める目的があります。

A 煎茶を淹れる

次に、茶壺から、茶葉を、茶合で分量を見計って、急須、又は宝瓶に入れます。



お湯を湯冷ましに入れ、適温になった頃、急須、又は宝瓶に注ぎます。茶葉が開いて、お茶の成分が出てきたら、煎茶碗に移します。その際、お茶が均等の濃さになるように気を付け、すべてのお茶を注ぎ出します。





煎茶碗に入れたお茶を茶托で受けて、一文字盆へ置き、客人に運びます。



B 煎茶を飲む

客人は、茶托で受けた煎茶碗を受け取り、お茶をいただきます。



一煎目と、2煎目の間に、茶菓子をいただきます。



C 煎茶碗を返却

お茶をいただいたら、茶碗を伏して、茶托に乗せ、煎茶碗をお返しします。



基本的には、茶道と同じですね。気軽に楽しんでいただきたいと思っています。
                                              (記 : 2014年11月23日)
最終更新日 : 2014年12月27日

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