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医師不足は、本当か?

近年、医師不足による、診療所や、公営病院の閉鎖、患者のたらい回し等が、社会問題化しています。

しかし、本当に、医師は、不足しているんでしょうか? 

 

上の表は、日本の医師の全体の数の推移を表しています。

日本では、各都道府県に1校は、公立の医学部を持つ大学があり、そこから毎年、定期的な医師が輩出されているわけで、全体として見れば、医師数が不足しているとは、言えない状況があるのです。

それでは、何故、マスコミは、医師不足が、「診療所や、公営病院の閉鎖、患者のたらい回し」の原因のような伝え方をするのでしょうか?

それは、マスコミ独特の、「木を見て、森を見ない」風潮のせいでもありますが、確かに、一部の地域、診療科においては、医師不足になっている状況は、あるようです。

ただ、後期高齢者医療の際も、そうでしたが、マスコミには、多くの後期高齢者にとってはいいことでも、ほんの少しの不利を蒙る人にスポットを当てて、批判する傾向があります。まさに、「木を見て、森を見ていない」のですが、マスコミの論調が、世論を作ることもあり、当事者、関係者は、大変な目に合うことになるのです。

下の表は、産科医数の推移を表しています。



日本は、少子高齢化の中の真っ只中ですので、産科医が減っても、おかしくはないのですが、その減り方は、医師数が全体としては増えている中、ちょっと異常です。

原因は、新医師臨床研修制度の影響や、福島県大野病院での訴訟の影響とか、言われていますが、私は、基本的に、「過酷な勤務」が、その原因であるような気がします。

医師とて、人間ですから、「楽をして稼ぎたい」という気持ちは、我々と同じだと思います。

私は、家内の出産の際に、総合病院での産科医の勤務状況を、目の当たりにして、とても、私では勤まらないな!と思ったものです。

家内は、帝王切開での出産でしたので、私も付き添っていたのですが、担当医は、午後、帝王切開の手術で、私の子供を取り上げた後も、午後10時頃には、別の妊婦さんの出産に立会い、午前2時にも、別の妊婦さんの出産、そして、翌日は、普通に、診療されていましたから、驚きの勤務状態でした。

お酒の好きな私では、すぐに、「酔っ払い医師」として、首になりそうな過酷な勤務状況でした。(笑)

担当医は、ポケベル(当時は、まだ携帯電話は、一般的ではなかった)で、24時間、呼び出されるそうで、産科医って、大変だな!と感じていました。

最近では、産科医に対して訴訟を起こす患者が多く、「勤務は過酷、すぐに訴えられる」では、「やってられない」というのが、実態なのではないでしょうか?

外科でも、同じ傾向があるようです。

誰だって、週休2日で、定時勤務だけでお金が稼げて、不自由のない生活を送りたいものです。都市部の病院に、新卒の医師が、集まるのは、必然であると思います。

そこを打破するには、やはり、「魅力的なインセンティブ」がないと、その偏りを直すことはできないと思います。

例えば、産科医や外科医には、診療報酬を20%アップさせる、産科医が訴訟を起こされた場合には、国が責任を持って解決する、僻地での報酬は、これも、20%アップ、公立の地方病院勤務は、10%アップ、そして、その他の医師からは、診療報酬を5%ダウンとかすると、偏りが是正されるかもしれません。

上記の例は、思いつきの例ですが、それくらいの「魅力的なインセンティブ」がないと、現代社会では、過酷な環境での労働を選ぶ人は、少なくなってきているのだと思います。

麻生政権では、国立大学の医学部の定員数を増やすとかしていますが、そんなことは、ほとんど効果はないと思います。何故なら、医師数は、絶対数では、増えていますし、「楽して、稼ごうとする医師」を増やすだけだと思います。

かつて、医師は、「町の名士」でした。神様のような存在で、尊敬もされていましたし、聖職として、崇められていました。また、医師もその期待に応えていました。

しかし、今では、数ある職業の1つになっています。そうであるならば、バランスの取れた医療体制を作るには、「魅力的なインセンティブ」で釣るしか方法はないのではないかと思っています。
                                              (記 : 2008年12月28日)

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