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エピソードと共に、その起源や、特徴を、ご紹介しています。意外な場所に、
意外な、お宝があるものです。画像と共に、うんちくも、お楽しみください。 

赤間関盛信作・赤間硯

赤間関 盛信作、梅紋蓋付き赤間硯(あかますずり)です。

赤間硯













大きさは、長さ:13cm、幅:9cm、高さ:2.5cmで、硯蓋付きです。

作者は、「盛信」ですが、ネットで調べても、古い硯にこの銘が見受けられますが、よくわかりませんでした。玉弘堂では、現在、4代目の当主堀尾信夫さん、3代目が、卓司さん共に、名前のみを銘として入れていますので、もしかすると、2代目のものかもしれませんね。(あくまで、私の想像です。)

小振りの硯ですが、蓋がついていて、梅紋が見事に彫られています。

先日買った、八雲塗の硯箱に丁度良いサイズでしたので、購入しました。(「八雲塗の硯箱」参照)

赤間硯は、地の色が赤ですので、硯を使った後に、水で洗うと墨の残り具合がよくわかります。濡れているうちに、ティシューや新聞紙で拭き取ると、きれいに墨が落ちます。丁寧に使うと、一生ものになりますよ。

★ 赤間硯 ★

赤間硯(あかますずり)とは、山口県宇部市西万倉(にしまぐら)で採石された原石を、宇部市、及び下関市で加工・製作している硯で、赤間硯の名は、現在の下関市、赤間関(あかまがせき)で作られ始めたことに由来し、昭和51年に、国の伝統的工芸品に指定されています。

赤間硯の歴史は古く、現存する最古の赤間硯として、建久二(1191)年に、源頼朝によって神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)に奉納されたものがあります。

江戸時代前期までは、採石・製作・販売のすべてを下関市(赤間関)で行われていましたが、江戸時代中期(寛保元年(1741年))から後期までは厚狭郡の稲倉村で、江戸時代後期からは、宇部市西万倉周辺での採石が始まりました。毛利藩は、良質の原石が採れる山は、御止山(おとめやま)として入山を禁じ、毛利藩を代表する献上品として、萩焼と共に、重要な藩の名産品となりました。

明治に入ると、藩の庇護はなくなりましたが、書道が広く一般的になったため、硯の需要は高く、生産も増えました。

しかしながら、戦後になって、工業化された墨汁と、プラスチック製の硯が出現し、硯の需要は、一気に減り、IT化によって、筆を使う文化が薄れた現代では、後継者も少なくなり、職人は10名を切り、山から石を削り取るところから始める人はわずか2名となってしまいました。

現在、硯の製作は、下関市南部町の玉弘堂(堀尾信夫)、宇部市西万倉の日枝玉峯堂(日枝玉峯)、弘雲堂(下井唯石)、くすのき製硯(下井昭竜山)等で行われていますが、後継者難で、存亡の危機にあるようです。(紺字の2名が、伝統工芸士)

赤間石(あかまいし)は、赤色頁岩(せきしょくけつがん)で、硯に加工できる石層は、わずか1〜1.5メートルしかないことから、坑内掘りで石層に沿って(斜度約20度)、採石を行っています。その特質は、材質が硬く、緻密で、石眼や美しい文様があり、しかも粘りがあるため細工がしやすく、硯石として優れた条件を持っています。また、墨を削る歯の役割を果たす「鋒鋩(ほうぼう)」がみっしりと立っているので、よく墨を磨き、墨の発色が良く、早く墨がすれ、さらっとのびの良い墨汁が得られます。

赤間石には、紫雲石(しうんせき)・紫青石(しせいせき)・紫玉石(しぎょくせき)・紫石(しせき)・紫金石(しきんせき)の5種類があり、一番多いのが赤みを帯びたチョコレート色の紫雲石です。



 坑道入り口

 坑道内部

 赤間石
                                     (上記画像出展:「書道あれこれ」)

赤間硯の特徴は、赤間石の色・質だけでなく、硯の形の多さであり、自然のままにとどめたものから、種々の彫刻をほどこした優美なものまであります。

角硯(かくけん)や丸硯(まるけん)などは、端正な美しさと重量感のある実用を兼ねた愛好品であり、野面硯(のめんけん)は、原石の形を活かした大胆な造形と自然美に趣があります。

彫刻は、簡素なものから精緻なものまで幅広く、伝統的な形式を守りながら、伝承されてきた技巧をあますことなく表現し、時代の特徴や傾向を如実に示します。また蓋付きの硯もあり、その彫刻は、赤間硯のもっとも魅力ある細工といわれています。

 玉池軒製

 玉池軒製

玉弘堂の堀尾卓司、信夫父子は、伝統のデザインから、現代感覚のある新作へも挑戦されていて、下のような作品も多く手掛けれらています。

 堀尾卓司作

下の硯は、紫金石と呼ばれる、旧山陽町(現山陽小野田市)で採れる縞模様のある青みや赤みを帯びた美しい石でできた硯です。硬い部分と柔らかい部分があるため彫るのに時間がかかり、現在は採石が困難なことから、あまり多くは作硯されていないようです。

 紫金石硯 

硯は、書道愛好家の間では、とても大切にされ、骨董としても楽しまれています。ただの用具だけではなく、文人墨客の憧れの的として、実用性と芸術性は両方とも要求され、鑑賞用としても、高い芸術的流価値を備えているものが作られました。

赤間硯と同様に、国の伝統的工芸品に指定されている、宮城県の雄勝硯(おがつすずり)も、震災と、後継者難で存亡の危機にあるようです。美術品としても、価値も高いものですので、何とか、伝統を受け継いでいってもらいたいものですね。(「雄勝硯、存亡の危機」参照)

硯に関する歴史、特徴等の説明は、「硯(すずり)と墨の話」に、解説してありますので、ご参照ください。

★ 硯に溜まった墨の落とし方 ★

私が買った硯も、使用後、きちんと洗っていないので、墨が残って、固まっています。

どうやったら、元の姿に戻せるのでしょう?

1.硯をいったん水中に三時間ほど浸してから、墨堂をスポンジで強くこすってみてください。

2.たいがい回復させることができます。たわし類はおすすめしません。

3.洗った硯は、陰干しし、乾かしてから箱に直しまます。(濡れたままだとカビが生える原因になります。)

一度カビが発生するとなかなかとれませんので、注意が必要です。その場合には、木炭やスポンジで繰り返し洗ってください。

★ 磨れにくくなった硯の手入れ法 ★
泥砥石
墨が磨れにくくなったということは、硯の鋒鋩の山そのものが磨滅してきているということです。そんな時は、泥砥石を用いて目立てをする必要があります。

You Tubeに、大変上手に説明してある動画がありますので、こちらをご参照ください。

硯の手入れ 硯に砥石をかける.mov 

http://www.youtube.com/watch?v=gJ1auk4dc0A
                                                (記 : 2013年6月1日)

古代伊予銘砥」(泥砥石)を買って、赤間硯の墨堂の目立てをしてみました。その様子は、「泥砥石で墨堂を目立て!」にありますので、ご参照ください。



追記 :

昭竜山(下井百合昭)作、赤間硯を入手しました。







  

大きさは、幅:65mm、長さ:125mm、高さ:18mm、重さ:260gで、「赤間石」と刻印があります。

実は、この硯・・・・この刻印を、「東方石」と読んで、岩手県の紫雲石硯だと思って買いました。紫雲石硯は、「東方紫雲」と言われているものがありましたので、「東方石」も不自然ではないし、売り手が、岩手に近い北海道でしたし、赤間石の場合、もっとわかるような刻印がされているものが多いので、てっきり、赤間硯だとは思わなかったのですが、最近、オークションで、赤間硯を見ていて、全く筆跡が同じものを発見し、この硯が、昭竜山作の「赤間硯」だと判明しました。

下の画像が、オークションで発見した昭竜山作の赤間硯の共箱の箱書きと、刻印です。



うんんん・・・・・・この刻印・・・・「赤間石」とは、読みづらいですね。(笑)

私は、刻印を頼りに、売り手が作者を特定できていないものや、間違っているものから、「お値打ちもの」を探すのが好きなので、こういうこともありますね。まぁ、私が見つけた、おまけに入っていた紅渓石硯をお安くゲットすることもありますので、ある程度の「外れのリスク」は、致し方ないところでしょう。(笑)(「崎川羊堂作・紅渓石硯」参照)

普段使いに使わせてもらおうと思っています。
                                          (追記 : 2013年11月19日)

追記2 :

くすのき製硯下井昭竜山(下井百合昭)作、赤間紫金石墨床を入手しました。「下井昭竜山作・赤間紫金石墨床」をご参照ください。



                                            (追記2 : 2013年12月5日)
追記 3:

堀尾玉潤作・蓋付き赤間硯を入手しました。









大きさは、長さ:14cm、幅:8cm、高さ:2.5cmほどで、彫刻の入った蓋付きになっています。

赤間関 玉潤作」と銘が入っていて、恐らく、昭和前期の時代のものと思います。

結構、使い込まれていましたが、上記にある方法で、硯をきれいにしてあげて、墨堂の目立てをして、蘇らせました。

最終更新日 : 2016年10月29日

 

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