は、平安中期の『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』に墨をする用具として須美須利(すみすり)と書かれており、「墨すり」→「すずり」が定着したという説が、有力のようです。
現代の硯は、石等を研磨し平たくしたもので、墨を磨る為に表面に細かく目を立たせたものを用います。
墨を溜める為の薄い窪みを、「海(うみ)」(墨海(ぼっかい)、墨池(ぼくち)、硯沼、硯池などとも)、墨を磨る為の少し高い部分を、「丘(おか)」(陸・墨堂などとも)といいます。
使用後は、必ず墨が残らないようその日のうちに、水できれいに洗う必要があります。残った墨(宿墨)が固まって、硯に付着すると墨を磨るとき付着した墨が、新しい墨と混ざってしまい、墨色を悪くし、嫌な匂いがつくことがあるからです。
丘の部分の墨を磨る凹凸の部分を、鋒茫(ほうぽう)といいますが、墨をすっていると、鋒鋩が磨り減ってきますので、硯専用の研石(砥石)で、少しずつ水を入れながら墨を磨るように軽く削って、凹凸を維持することが必要です。
私は、墨を磨るのは、墨と硯の両方から、墨状のものが出てくると思っていて、一生懸命、硯を削り取るようにして、墨を磨っていましたが、そのやり方が誤りであることに、今日、気が付かされました。
結構、同じように思っている人もいるんじゃないでしょうか? 私だけかな?(笑)
★ 硯を選ぶ時のポイント ★
硯を選ぶ時は、水を硯の面に浸し、指で軽くなでて、鋒鋩が立っているのを確認したり、硯の面に指の爪を軽くあて上下左右に軽く動かしてみると、良い硯は爪が削れて跡が付きます。硯の面は美しいが、つるつるしてタイルのような物は硯の役目をしないそうです。
★ 硯に溜まった墨の落とし方 ★
私が買った硯も、使用後、きちんと洗っていないので、墨が残って、固まっています。
どうやったら、元の姿に戻せるのでしょう?
1.硯をいったん水中に三時間ほど浸してから、墨堂をスポンジで強くこすってみてください。
2.たいがい回復させることができます。たわし類はおすすめしません。
3.洗った硯は、陰干しし、乾かしてから箱に直しまます。(濡れたままだとカビが生える原因になります。)
一度カビが発生するとなかなかとれませんので、注意が必要です。その場合には、木炭やスポンジで繰り返し洗ってください。
★ 磨れにくくなった硯の手入れ法 ★
墨が磨れにくくなったということは、硯の鋒鋩の山そのものが磨滅してきているということです。そんな時は、泥砥石を用いて目立てをする必要があります。
You Tubeに、大変上手に説明してある動画がありますので、こちらをご参照ください。
硯の手入れ 硯に砥石をかける.mov
http://www.youtube.com/watch?v=gJ1auk4dc0A
「古代伊予銘砥」(泥砥石)を買って、赤間硯の墨堂の目立てをしてみました。その様子は、「泥砥石で墨堂を目立て!」にありますので、ご参照ください。
国産の泥砥石
★ 雄勝硯(おがつすずり) 存亡の危機 ★
日本産の硯である和硯(わけん)の中でも、宮城県石巻市の雄勝硯と、山口県宇部市の赤間硯は、国の伝統工芸品の指定を受けていますが、2011年3月の東日本大震災で、600年の伝統と技が生き、国内の90%のシェアを持つ雄勝硯の産地が、壊滅的な被害に会い、雄勝硯生産販売協同組合に所属する8事業所すべてが、建物や設備を津波で失い、12人の職人のうち、1人が行方不明となりました。
幸い、海抜400〜500メートルの場所にある採石場は生き残りましたが、採石場への道路が震災で壊れたままとなっているほか、石の加工設備の調達も課題になっています。
石の採掘業者も被災したため、組合では店舗とは別の仮設工場を設置し、採石から切断、研磨加工までを組合で運営することを検討しているいうことです。
また、後継者不足と、IT化による、硯の需要の落ち込み等の問題もあります。
首都圏の料亭などへの販売が好調な、雄勝石を食器に加工する新事業を梃子にして、原点である硯の伝統も守っていきたいということですが、伝統は、途切れると、復活させるのが大変ですので、がんばって欲しいですね。
追記 :
翡翠窯陶房、野中春甫(のなか しゅんぽ)作、青白磁の陶硯(とうけん)を、手に入れることが出来ました。「野中春甫作・青白磁の陶硯」をご参照ください。
追記 2:
村上木彫堆朱(むらかみ きぼり
ついしゅ)を思われる、漆硯(しっけん)を入手しました。「村上木彫堆朱の漆硯」をご参照ください。